シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

クロニクル ~カルマ~

クロニクル ~カルマ~ 第8話「海に還る日」(11)

海に還る日11

 誰一人いなくなった荒波の打ち寄せる浜辺に、真砂はいつまでも佇んでいた。
 地球は誕生してからずっと創造と破壊を繰り返してきた。海ができ、陸地が形作られて多くの種が生まれては消えた。
 両生類が、爬虫類が、昆虫が、恐竜が、そして人類を含む哺乳類が環境に合わせて姿形を変え、進化しては滅んでいった。
 だが、海の環境だけはジュラ紀の頃とたいして変わらず、海に生きる生物たちは原種の姿形を残しながら今も生きている。
 命の母なる海…生命が創造された海こそがエデンであり、地球上で最も広い豊かな場所だ。今彼らは楽園に帰っていった。
 愚かな地上の人間が滅んで、やがて時が流れた後も、地球の海には水棲人となった知性豊かな人間の末裔が生きているだろう。
 もしや神はそれを望んでいたのではないか?…神が人を自らに似せて創ったなら、アダムとイブを無知なままにしておくだろうか?
 きっと神はアダムとイブに知恵を授けて楽園を旅立たせたのだ…長い旅の果てに世界を学び、神のように賢くなる事を望んで。
 だが彼らの子孫はその真意を知らず、神との契約を違えて嘘をつき、同族殺しをし、あまつさえ地上を穢して破壊してしまった。
 それでも神は人間を見捨てずに、善きサマリア人の子らにしてノアを…新世界のアダムとイブを私の元に遣わし賜うたのだろう
 さようなら、滅びゆく人類よ。そしてこんにちわ、新人類の水棲人…神との契約は果たされた。世界は知性に満ちてゆくだろう。
 どうか新世界のアダムとイブが苦労の中に喜びを見出さん事を…彼らの上に神の祝福があらん事を願う。

<フリーゲンより>
 先代種族が滅びてすでに数億年が経ったと聞く…我らフリーゲンには年月を数える習慣がないので、詳しい歴史は分からない。
 実は我々にそんな歴史を教えてくれたのは、手を持つイルカのような姿をしているアドミラートと言う博識な海の種族だった。
 彼らには大小様々な者がいて、総じて我々フリーゲンよりも長い寿命を持っている。中には300年以上生きている者もいると聞く。
 そして、我々が群れで空を移動するように、彼らも広い海の中を海流に乗って旅をしながら、出会えばお互いに交流をしている。
 地球上の至る所に種を播くように教えてくれたのも彼らだった…お陰で先代種族が荒らした地上は今や見事な緑の楽園となった。
 尤も彼らが先代種族の末裔だと言う話は俄には信じがたい…なせなら、彼らは先代種族とは余りにも性質が異なっているからだ。
 先代種族は同族同士で殺し合い、大地を穢して自然を破壊したと聞くが、アドミラートにはそんな凶暴性はまったく見られない。
 驚くのは、アドミラートが我々フリーゲンと同じ感性を持っている事だ…彼らも我々同様何物にも縛られずに自由に生きている。
 地を這う生き物だった先代種族は総じて感性が近視的で、土地を所有したり、地面を線引きして縄張りを争い合ったそうである。
 だが空を飛ぶ我々の目で見ると、地上は誰の所有物でもなく境界線などどこにもない…祖先たちも国境を越えて行き来していた。
 もし先代種族に翼があったならば滅ぶ事などなかっただろう…空に行く手を阻むものは何もなく、誰かが邪魔になることもない。
 左右上下の広い空間があるのだからあえて争い合う事もない…第一、空と言う立体空間にどうやって線を引いて争えるのだろうか。
 先代種族の宇宙飛行士なるものが、空の高みから地球を見て言ったそうだ「地球は青かった。広い海の中に点々と陸地が浮かんで
 どこにも国境線はない。地球は宝石のように美しい。」と…我々フリーゲンははるかな昔からそんな目でこの美しい星を眺めてきた。
 アドミラートが先代種族の末裔なら、海中と言う立体空間で生活するようになった事で我々と同じ感性を獲得していったのだろう。
 地球は誰の物でもない。星に生きるすべての生物の自由の天地だ…地べたを這い、平面でしか世界を見れなかった先代種族は
 自己のエゴに固執したがために、争い合い、土地を奪い合い、自然環境を破壊して自滅していった…自業自得(業)であろう。


人類消滅後の世界をシュミレーションする

第8話 「海に還る日」 (完)

にほんブログ村 小説ブログへ
クリックをお願いします
 
関連記事
スポンサーサイト
もくじ  3kaku_s_L.png ゴジラの子守歌
もくじ  3kaku_s_L.png 未来戦艦大和
もくじ  3kaku_s_L.png やさしい刑事
もくじ  3kaku_s_L.png まぼろし
総もくじ 3kaku_s_L.png その他の小説
もくじ  3kaku_s_L.png オリジナル詩集
もくじ  3kaku_s_L.png 随想/論文集
もくじ  3kaku_s_L.png 死とは何か?
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←時と運命 ~新年に思う~    →クロニクル ~カルマ~ 第8話「海に還る日」(10)

~ Comment ~


集団あるいは個々の生活においては土地を持つこと自体は悪くないけど
その使い方が良くなかったんだよね。
その土地にはその土地でしか生まれない物もある。
確かに希少な物はあるけど、そういった物に勝手に価値を付けるから奪い合いになる。
分け合えないのは残念ながら仕方がない。
古くから人間はそれを強引に手に入れようとするのがまずかった。
#6806[2017/12/29 10:47]  西條すみれ  URL 

連載おつかれさまでした。
終末ファンタジーという感じの不思議なお話でしたね。楽園を描くお話はそうなるものかもしれないですが。
地上に線を引かず、争わない。それが人間にも出来るようになればいいのですが。
深みのあるお話、ありがとうございました。

#6807[2017/12/29 12:34]  椿  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> 分け合えないのは残念ながら仕方がない。
> 古くから人間はそれを強引に手に入れようとするのがまずかった。

さて、自分(地球)が人類に土地(家)を貸した大家だとします。
1) 他の生き物を大事にする事…但し、腹が減ったら食べる分だけは獲ってよい。
2) 土地(家)を自分の都合で勝手に改ざんし、穢したり、破壊したりしない事。

以上の契約を結んだ上、地代(家賃)はタダと言う条件で人類に地球を貸しました。
なのに人類は契約を破り「これは俺のものだ」と、大家に無断で線引きし、同族争いをするばかりか他の生き物を粗末に扱い、土地(家)を穢して、環境を破壊するに至りました。
契約違反ばかりの人類には出て行ってもらいます!マシな他の生物に貸す事にします。
なお、人間の肉体を形作る原料も、持ち物の原料も、私(地球)が貸し与えたものですから、出て行く際には全部返還して下さい…人類は全てを私(地球)から借りて生きていたのだから当然です。
ようやく気がつきましたか?…大きな顔をして傲慢に振舞っているあなた方は、最初っから何一つ持っていなかったのです。全て私(地球)が貸してやっていたから生きてこられたのです。
では、肉体も何もかも私(地球)に返してから、素っ裸で良いお年をお迎え下さい。
と、言うメッセージが地球から届いています…これは後で詩にしましょうかね(笑)
#6808[2017/12/29 15:34]  sado jo  URL 

Re: 椿様COありがとうございます^^

> 地上に線を引かず、争わない。それが人間にも出来るようになればいいのですが。
> 深みのあるお話、ありがとうございました。

終末ファンタジーと言うより、将来に必ず起こりうる現実を小説にしました。
環境悪化、もしくは核戦争で地上に住めなくなった人類が、もし生き残れるとしたら「海」をおいて他にはありません…鯨やイルカの祖先がそうした様に「水棲生物」に進化する事です。
彼らは何十世代も掛かったが、遺伝子操作技術があれば人類は数世代後には海に適応した生物になれるはず…その際、超音波でも何でもいいから、言語を失わない工夫が必要です。
言語を持つ事こそが知的生物の証…言語を失くしたらただの野生動物ですから(笑)
旧約聖書のエデンの園を「海」と仮定した「新創世記物語」でした…寿命が許すなら、この話は後に小松左京の「復活の日」ばりの長編小説に纏めてみたいと念願しています^^
#6809[2017/12/29 16:00]  sado jo  URL 

連載お疲れさまでした

おや、フリーゲンが出てきましたね

確かに空と海は境界線なんてないですしねw
だからかもですが、地を這う者どもは、シビアな順に領空・領海・領地なんていう境界線を引いてますねw


まだ、あと2日残ってますが、自分にとって2017年は乱気流のような年でしたw

いいこともそれなりにありましたが、嫌なこともそれなりにありました
とはいえ、トータル的に見れば悪くなかった気がします

むしろ来年につながるような布石がいくつかできた感じなので、今から来年が楽しみだったりします
#6810[2017/12/29 17:49]  blackout  URL 

Re: blackout様COありがとうございます^^

> おや、フリーゲンが出てきましたね
> 確かに空と海は境界線なんてないですしねw
> だからかもですが、地を這う者どもは、シビアな順に領空・領海・領地なんていう境界線を引いてますねw

ありがとうございます^^
小説の中のフリーゲンは、鳥から進化した未来の知的生物で大空に生きています。
アドミラートは、荒廃した地上を逃れて海に入って進化した人類の末裔になります。
両者は未来の地球で、食料や生活必需品、知識をやり取りして良好な関係を築いてます。
さて、先代種族(陸上で生きた人類)は、地球の全てを我が物にしようとしましたが、鳥には領空を侵犯され、水棲生物には領海に常に侵入されてました(笑)
立体空間にまで勝手に線を引き、自分の支配領域を知らぬ愚かな生き物だった(笑)
人工衛星やロフテッド軌道で飛ぶ飛翔体に領空は無意味であり、水中をゆく潜水艦に領海は意味を為しません…それを防ぐ為に幾ら軍事予算を掛けても相手は楽々と入ってくる。
無駄な金をつぎ込む位なら、民間外交を活発にして良好な交易関係を築いた方がマシなのですが、敵対関係を作り出す事に熱心な連中は、一体何をしたいんでしょうかね?
こちらも人間、相手も人間…一番大事な所がスポッ!と抜けている様な気がします(笑)
#6811[2017/12/29 18:43]  sado jo  URL 

おはようございます
遠い将来、地球から人間がいなくなるのも一理あると思います
#6812[2017/12/30 10:22]  ネリム  URL  [Edit]

Re: ネリム様COありがとうございます^^

> 遠い将来、地球から人間がいなくなるのも一理あると思います

数百万年後には人類は確実に地上から消えるでしょうね…科学的に見ても。
ただ、完全に絶滅するか、人間型から他の形態に進化して遺伝子を残すか…の違いです。
恐竜が鳥に進化して形態を変えた様に、人も海に入って進化して水棲人になると思います。
人間の遺伝子が地球から消えてしまったら悲しすぎるでしょ…できたら人魚姫型に進化してくれたらロマンがあっていいけどなぁ♪でも、女はいいけど男は♂がなくなるかも?(笑)
#6813[2017/12/30 10:55]  sado jo  URL 

読んでいて思いました。
生きものがすべて進化の方向に向かってるのであれば、
人間にどうして翼とエラが備えられなかったのか。
そうすれば、空を飛び、海に潜り、
自由自在に地球で”生”を楽しめたのではないか。
しかし神は人間が地上に生きることを定めた。
ということは人間は地上を楽園にする義務があるのでしょう。
いま自然は災害という形で悲鳴を上げているようです。
ずっと地底に住んでいる人種もいるのだという話がありますが、
人類にはもはや海しか生きる場所はないとは悲しい話です。
神は、人間の自業自得を冷たく眺めているだけなんでしょうか。
そうなら「無条件の愛」という神の定義はやめないといけませんが。
#6814[2017/12/30 11:41]  ☆バーソ☆  URL  [Edit]

Re: パーソ様COありがとうございます^^

> 人類にはもはや海しか生きる場所はないとは悲しい話です。
> 神は、人間の自業自得を冷たく眺めているだけなんでしょうか。
> そうなら「無条件の愛」という神の定義はやめないといけませんが。

ティラノサウルスはとても狩りの下手な恐竜だった…と言う説があります。
そりゃ、あの図体で獲物を追っていて、窪地に足を取られたら転ぶでしょうよ(笑)
鳥になった恐竜は元々二足歩行で、翼は飛ぶ為でなくバランスを取る為に生やした。
人と猿の祖先は四足歩行でした…だから翼を生やして空を飛ぶ発想がなかったのです。
ちなみに天使の姿は生物学上の無理があります…あれでは昆虫類(六足)になる(笑)
生物は棲息環境に従って変化します…四足動物だった鯨やイルカの祖先は、見事に海に適応してあの姿になった訳です。陸地に棲めなくなった人間が海に入ればあぁなるでしょう。
もし、神がDNAを創造したなら凄い芸術作品だと思います…環境に合わせて変幻自在に姿を変え、どこでも楽園にする能力がある。それこそが神の愛なのではありませんか?
神の愛を忘れて同族同士で争い、楽園の自然環境を破壊する様では先が見えてますね。
#6815[2017/12/30 14:27]  sado jo  URL 

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
#6816[2017/12/30 17:28]     

こんばんは

感動的なラストです。
そうか、エデンは海だったのか。
知性あるクジラは陸からエデンたる海にに帰っていきました。
さすがクジラです。
数日前に円谷監督特集があってウルトラマンの裏話を
やっていました、観られました?

今年はたくさんのコメントありがとう。
来年もよろしく。
#6817[2017/12/30 18:48]  エリアンダー  URL 

Re: m様COありがとうございます^^

入院治療中なのだから、ブログの方は余り気にしないで治療に専念して下さい。
良いお年をとは言いにくいけれど、完治して退院する日をお待ちしています^^
#6818[2017/12/30 20:28]  sado jo  URL 

Re: エリアンダー様COありがとうございます^^

> 感動的なラストです。
> そうか、エデンは海だったのか。

生命は海から生まれました…なら海は科学的にはエデンの園になります。
陸地が完全に荒廃して棲めなくなれば、人はエデンの海に還る事になるでしょう。
平面世界で生きてきた人類が、立体空間で生きる様になれば、感性は完全に異なったものになると思います…多分、宇宙空間でも同じ事が起きるはずです。
宇宙から帰還した飛行士の話を聞くと、普通の人の感覚を超えていますからね^^

最近、すっかりテレビ嫌いになってしまって生憎観ていないんですよ(苦笑)
#6819[2017/12/30 20:40]  sado jo  URL 

ご無沙汰です🎶

1年ぶりにおじゃましました。
昨年は、大変お世話になりました。
お元気で更新なさっていらっしゃるようで、安心です。
マイペースで生きています(苦笑)。
ご挨拶まで(^-^;・・・。


#6820[2017/12/30 21:28]  kanmo  URL  [Edit]

Re: kanmo様COありがとうございます^^

> 1年ぶりにおじゃましました。
> 昨年は、大変お世話になりました。
> マイペースで生きています(苦笑)。

お元気そうで何よりです^^
私も年々老けていって、今や無理せずにマイペースで更新しています(笑)
早速ブログをリンクしておきます…良いお年をお迎え下さい。
#6821[2017/12/31 00:28]  sado jo  URL 

今年一年お世話になりました。
よいお年をお迎えくださいませ(^_-)-☆
#6822[2017/12/31 16:54]  まり姫  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

> 今年一年お世話になりました。

いぇいぇ、こちらこそお付き合いありがとうございました。
病院は何かと不自由で、治療も辛いでしょうががんばって年を越して下さい^^
#6823[2017/12/31 18:04]  sado jo  URL 

あけましておめでとうございます。
去年はずいぶん制作活動が活発でしたね。
今年もさらに勢いを増す予定でしょうか。
芸術は歳を取ると感性が増すようです。
体調に気を付けてがんばってくださいね。
今年もよろしくお願いします。^^)
#6824[2018/01/01 12:24]  ☆バーソ☆  URL  [Edit]

Re: パーソ様COありがとうございます^^

> あけましておめでとうございます。
> 去年はずいぶん制作活動が活発でしたね。
> 今年もさらに勢いを増す予定でしょうか。

こちらこそおめでとうございます^^
戌年が来てめでたいと言っても、世界は吼えて噛み付く猛犬(リーダー)ばっかりです。
トランプ戌に金戌>< うちで飼ってる秋田県…いゃ、阿部戌などは大人しい部類の方です。
2018年も物騒な年になりそうなので、戦々恐々としてますよ(笑)

う~ん、ネタは幾らでもあるのに、寄る年波で筆が進まないのが如何ともしがたいです(苦笑)
#6825[2018/01/01 13:57]  sado jo  URL 

おめでとうございます。

あけましておめでとうございます
本年もよろしくお願い申し上げます
#6826[2018/01/01 16:29]  えいび  URL 

Re: えいび様COありがとうございます^^

こちらこそおめでとうございます^^
昨年は体調が悪かったり色々あってなかなか立ち寄れませんでした。
今年はできるだけ足跡を残せるように努力します。
#6827[2018/01/01 18:41]  sado jo  URL 

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
#6829[2018/01/01 22:39]     

Re: E様COありがとうございます^^

こちらこそおめでとうございます^^
寄る年波のせいか、昨年頃から体調が不安定で思う様に身体が動かせません。
足跡を残せる様にできるだけがんばって努力いたしますのでよろしくです。
#6831[2018/01/02 11:21]  sado jo  URL 














管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←時と運命 ~新年に思う~    →クロニクル ~カルマ~ 第8話「海に還る日」(10)