シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

アニメ /コミック

虐殺器官

虐殺器官

先進国で続発するテロを防ぐ為、アメリカは一人の天才的言語学者を送り込んで、後進国での内部テロへと誘導しようとした。
ところが、その男「ジョン・ポール」は秘密結社を作って、世界中の後進国や政情不安定な国々で次々と内戦を誘発していった。
先進国以外の国々で虐殺が蔓延し、世界がカオス状態になる事を恐れたアメリカは特殊部隊を送り、ジョン・ポールの暗殺を図る。
特殊部隊のリーダー「クラビス・シェパード」は、戦いで多くの部下を失いながらも苦闘の果てに、ようやくジョン・ポールを追い詰めた。
「なぜ君は世界各地で虐殺を扇動するのか?」と、問うクラビス・シェパードに、ジョン・ポールは驚くべき真実を伝えるのだった。

原始時代に狩りをしながら暮らしていた人を旱魃が襲ったとする。するとみんなで集まって協力し合いながら狩りをする様になる。
その方が生存率が高まるからね…その集団が大きくなり食料の安定供給の為に農耕を始めたとしよう。その集団を再び旱魃が襲う。
その場合、人々はどうするかね?…虐殺だよ。口減らしの為に、弱い者や劣る者を殺害して排除し、食料供給の安定化を図るんだ。
私はね…先進国の人々の安定した生活を守る為に劣った国々の人の数を減らしているんだ。国家命令を忠実に遂行してるんだよ。
人の脳の中には、生きる為に愛し合い共存するモジュールもあるが、生きる為に争い合い殺し合うモジュールも備わっているんだ。
私は人の脳の中にある「虐殺器官」を呼び覚まして扇動する虐殺文法を利用して、世界中の国々に虐殺ウィルスをばら撒いたのだ。

~2007年:早川書房出版 著者:伊藤計劃 長編SF小説『虐殺器官』(小松左京賞受賞) 2017年アニメ化より~

人の脳内には、まだ畜生だった頃の本能器官の残滓が残っている。理性や良心と言うものは畜生から人になる過程で得たものだ。
だから、ありふれた一定の文法を用いれば理性や良心を簡単に捨てさせて、本能器官を呼び覚ます事ができる…例えばこんな風に。
「君は軍人だ。これは仕事である」こう言えば兵士は人間性を捨てて罪悪感なしに人を殺せる。仕事だから…が文法になっている。
「自分の為にやれ」と言っても人は動かないが「国家の為にやれ」と言う大義を持ち出すと動く…これも虐殺をそそる文法の一つだ。
この様に、ある文法を用いれば人に理性や良心を捨てさせて、容易に畜生に戻せる…ヒトラーは虐殺文法を巧みに操る天才だった。

いかにもジョン・ポールの虐殺文法は、ナショナリストやポピュリスト、極右・右翼や愛国主義者が好んで使いそうな文法ではある。
虐殺文法を用いて、理性や良心で成り立っている正義を本能が欲するエゴにすり替え、それが正義だと個人や大衆に思い込ませる。
人々は自分達が見たいものしか見ようとはせず、望むものしか受け入れない。遠くで起きている悲惨な出来事は対岸の火事なのだ。
だが本能を呼び覚まされて動く以上、本音はエゴであり、口減らしの為に自分より弱い者を貶め、排除しに掛かってるに過ぎない。
しかも、虐殺文法を用いた結果として何が起きるのか?彼らには逆の事態を招く事が…未来がまったく見えてないのは奇妙な事だ。
驚く事に虐殺した側より、虐殺された側の方が増えてしまうのである…つまり自然界で言う弱者の「生命補完法則」がそこに働く。
ナチスに大量虐殺されたユダヤ人は、今やドイツ人より遥かに増え、米国に虐められたアラブ人は以前より数が増えてしまってる。
幾ら殺されて泣いても、飢えていても、失った以上の生命を産む…それこそが自然が弱者に与えた強者に対抗する武器なのである。

34歳の若さで夭逝してしまった伊藤計劃と言う天才的作家が「虐殺器官」の続編を書いたなら、その虐殺の顛末を描いた事だろう。
「言葉には人を殺す力がある」と言う彼の名言は我々の頭上に重く圧し掛かっている。人は今その現実を目の当たりにしてるのだ。
差別やイジメ、テロや動乱は「虐殺文法」が起こした現実である…いかなる者であれ、人の「虐殺器官」を目覚めさせてはなるまい。


伊藤計劃原作:衝撃の劇場映画 「虐殺器官」 (全編ご覧いただけます)

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~ Comment ~


人間には共存と排除の二つのモジュールが備わっている。
車にはアクセルとブレーキの二つのペダルが備わっている。
モジュールやペダルそのものに本質的な問題があるわけではなく、
どちらを使うかは個々の人間の考え一つと言えそうです。

この文法の話はおそろしいですね。
信念や大義や忠義を持ち出せば、良心的な人は行動してしまいます。
イジメの場合は集団心理とか他の情けない性格が関係していそうですが。

サンデル教授の「白熱教室」を思い出しました。
海で遭難して沈みそうなボートに何人かが乗っているとき、
ボートから一人を排除すれば全員が助かるとする。
では、その一人を排除しようとするか、排除するなら誰を選ぶか、
多数者を救うために弱者を排除するのは許されるのか・・・。
肉食獣は食欲が満たされているときは他の動物を襲わないそうですが。
#6850[2018/01/08 09:23]  ☆バーソ☆  URL  [Edit]

この法則は自然界なら食べる側には都合のいい法則なんだけどね。
人間が、ましてや同じ人間同士でやる意味はない。
むしろ憎しみを募らせるだけで、いつまでも互いを敵視することになる。
今となってはもう手の施しようのないことかもしれないけど
やっぱりオバマさんには続けてほしかった。
#6851[2018/01/08 11:21]  西條すみれ  URL 

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#6852[2018/01/08 11:38]     

Re: パーソ様COありがとうございます^^

> この文法の話はおそろしいですね。
> 信念や大義や忠義を持ち出せば、良心的な人は行動してしまいます。

強者(多数)が弱者(少数)を虐げるのは悪である…と言うのは、人が後天的に獲得した理性であり、良心から出た正義の賜物です。だから人間でいられます。
その正義を覆す「虐殺文法」は、個人や大衆のエゴを正義だと思い込ませ「虐殺器官」を目覚めさせて、畜生の本能を取り戻させる扇動(洗脳)手段として用いられます。
虐殺ウィルスに汚染された個人や集団は、当然、人類社会には危険な存在なので駆除する必要があります…ところが駆除する狩人側も、また虐殺文法を使用するのです。
何と!…旧ドイツや旧日本を狩りに行った連合国側でも盛んに虐殺文法が使用されていた。
虐殺器官が目覚めた彼らにとって、広島や長崎の人々は、人間とは見えなかったのです。
「言葉には人を殺す力がある」と亡き天才作家:伊藤計劃が言うのはそう言う事です(怖)
#6853[2018/01/08 13:37]  sado jo  URL 

Re: すみれ様COありがとうございます^^

> この法則は自然界なら食べる側には都合のいい法則なんだけどね。
> 人間が、ましてや同じ人間同士でやる意味はない。
> むしろ憎しみを募らせるだけで、いつまでも互いを敵視することになる。

人は理性や良心を獲得してから、畜生の「弱肉強食」に別れを告げて人間になった。
剥き出しの弱肉強食が悪になったとは言え、強者が弱者を支配する構図は変りません。
人は半獣半人の様なもので、本能の中には、まだ畜生の「虐殺器官」を残しています。
それが目覚めると、弱者(少数者)を虐めて、排除する畜生のサガが露になってきます。
アメリカ…と言うより、世界がそんな様相を帯びてきてるのは、大変恐ろしいことです。
誰が「虐殺文法」を使っているのか?…我々は畜生の世界に引き摺り込まれない様に、耳に心地よい話や、本能を刺激する言葉には注意して警戒する必要があると思います。
#6854[2018/01/08 14:20]  sado jo  URL 

Re: m様COありがとうございます^^

入院してるのに、無理しなくていいですよ~
ともかく今は治療に専念して下さい。お大事に^^
#6855[2018/01/08 15:31]  sado jo  URL 

人類は「虐殺器官」のせいで多大な迷惑を被ってきました。
右も左もなく、ヒトラー、スターリン、毛沢東、ポルポト・・・。
医学の発展でDNAから「虐殺器官」を除去できた場合、
種の弱体化を招き、将来的に人類全体の存続が危うく
なるんでしょうか?(笑)
#6856[2018/01/08 20:31]  エリアンダー  URL 

Re: エリアンダー様COありがとうございます^^

> 人類は「虐殺器官」のせいで多大な迷惑を被ってきました。
> 医学の発展でDNAから「虐殺器官」を除去できた場合、種の弱体化を招き、
> 将来的に人類全体の存続が危うくなるんでしょうか?(笑)

多分「虐殺器官」を持っているのは人間だけでしょう。
他の動物にも、捕食と繁殖の為の闘争本能は見られますが、過剰な虐殺はしません。
群れで争っても、相手を皆殺しにした例も、死体を山と積み上げた事例もありません。
見せしめの残虐行為も、惨たらしい虐殺もしません…大概は相手の急所を一撃で狙います。
殺戮しないと後で復讐されるからとか、食料が減るからとか、権力の威厳を示す為とか…先を予見できる能力を獲得した人間独特の器官なんじゃないでしょうか?
#6857[2018/01/08 23:32]  sado jo  URL 

訪問&応援だけ~(^_-)-☆
#6858[2018/01/09 15:18]  まり姫  URL  [Edit]

こんにちは!いつも、ありがとうございます。

夫がお正月休みの間に読んでいた本。

チラ見ですが、見ると、

現アメリカ政権は、日本より中国との関係を重大視している。
キッシンジャー氏が関わっている企業のクライアントが主に中国人だから、らしいです。

で、キッシンジャー氏がトランプさんの娘婿に指示していると、ありました。
著者は日本の大学教授でしたが。
関係のないコメントですが、ふと、その記述を思い出してしまいました。(^_^;)
#6859[2018/01/09 17:10]  窓  URL  [Edit]

Re: まり姫様COありがとうございます^^

ありがとうございます^^
病院での治療の方は上手く行ってますか?
#6860[2018/01/09 19:55]  sado jo  URL 

Re: 窓様COありがとうございます^^

> 夫がお正月休みの間に読んでいた本。チラ見ですが、見ると、
> 現アメリカ政権は、日本より中国との関係を重大視している。
> で、キッシンジャー氏がトランプさんの娘婿に指示していると、ありました。

アメリカが日本より中国を選ぶのは仕方ないでしょう…だって市場規模が違いすぎる(笑)
キッシンジャー博士は、米国のグローバル経済の元祖開拓者で、共和党の元重鎮でしたね。
イデオロギーや過去の事件に囚われない政治理念で、中国と手を結び米国を繁栄させました。
それで正解だと思います…政治は主義主張ではなく、国民に実益を齎さなければ意味が無い。
娘婿のクシュナー氏とはさぞ馬が合うでしょう…私は彼がロシアと交渉するのに反対しません。何となればロシアがアメリカと仲良くなれば、日本にも大きなビジネスチャンスが巡ってくる。
かってキッシンジャーがやった中国開放の様にね…政治は「実利の優先」を基本とすべきです。
政治体制や過去の出来事より、付き合って儲かるか、儲からないか…それを国益と言います。
更迭された中国嫌いのバノン氏の如く好き嫌いで選んではダメ!…それでは恋愛論になる(笑)
#6861[2018/01/09 20:31]  sado jo  URL 














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