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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

アニメ /コミック

『BLAME!-ブラム』 ~探索者~

BLAME

元映画のスタッフだった自分は、現実世界と繋がらない萌えアニメは意味も、観る価値も無いとプロの目で見てしまう癖がある。
そんな自分が紹介するアニメはファンから見ると偏っているかも知れない。だが、あなたの人生の何かの肥やしになるはずである。
34歳で夭逝した天才的作家:伊藤計劃の『虐殺器官』も凄いが、無機質な世界を描き出す弐瓶勉の『BLAME!』はもっと凄みがある。
弐瓶勉と言えば、人気になった『シドニアの騎士』が有名だが、BLAME!は彼の処女長編漫画として独特の世界観を醸し出している。

人々がネットに接続する能力を失くした(これを感染と作中で表す)遠い未来、人のコントロールから離れたAIマシンは自立した。
機械はプログラムされた命令に従って勝手に都市を増殖させ、世界中を都市で埋め尽くして人間を都市の片隅に追いやるに至った。
そして人間を不要な不法居住者とみなしてセーフガードマシンを使って虐殺し、ちりぢりになった僅かな人は隠れて暮らしている。
そんな隠れ村に住む少女ヅルは、親友タエの妹が栄養失調で死に掛けているのを救おうと、仲間と共に食料探しに出掛けるのだが、
セーフガード達に発見されタエは瀕死の重傷を負う…そこへキリイと言う謎の男が現れて、重力子銃を発射してヅル達を助け出す。
ヅルはキリイと共に、傷を負ったタエを連れて村へ帰るが、助けたはずのタエはセーフガードに身体をコピーされて乗っ取られていた。
ここから先の展開はネタバレになるので明かしません…お金を払っても観る価値のある作品なのでDVDを借りて鑑賞して下さい(笑)

一つ明かせば、キリイの「俺はネット端末遺伝子を持つ人間を探している」と言う言葉から、彼は人造人間ではないかと思われる。
セーフガードであった彼がシステムを裏切ったのは、バグではなく、人間の管理下にあった頃の古いメモリーが作動したからだろう。
機械である彼が人間を守ろうとするのは創造主への憧れと好奇心で、それ故とうの昔に失われた本物の人間を探す探索者となった。
人が神を求めるのと同じ理屈だろう…原作の漫画は内容が難解で、話が読み難くかったが、動きのあるアニメではよく理解できた。

シドニアの騎士もだが、弐瓶さんの作品はいつも深いテーマを孕んでいる…それは人が生きるのはどんな意味があるかと言う事だ。
シドニアの騎士のガウナも、BLAMEのシステムも我々人間にこう問いかけている「お前達が生きている意味を…その理由を答えよ」
ところが我々はその答えを持っていない…ただ産まれて、他の生物を簒奪して食べ、争い合い、子を為して死んでゆく存在だから。
そこでガウナもシステムも生きる意味を持たない人間を排除しに掛かる…如何にも弐瓶さんらしい無機質でダウナーな哲学である。
人が生きる意味を純粋に深く探求してゆくと最期は死に至る。人生の意味を問い続けた芥川龍之介や太宰治がそうだった様に…だ。
多分、自分がこの歳になるまで生きてこられたのは、彼らほど生の感性が鋭くはなく、純粋ではない穢れた人間だったからだと思う。
凡人の自分と違って彼らが天才と呼ばれる由縁はそこにある…視点は異なっているが弐瓶勉さんや伊藤計劃さんは天才なのだろう。

制作会社は違うが『BLAME!』は『シドニアの騎士』そっくりの弐瓶勉の画風と緻密で無機質なメカデザインなのがとても素晴らしい。
C.Gやアクションの派手さにうっかり気を取られると、大事なテーマを見落としてしまう所もよく似ているので、気をつけて欲しい。
ただ、どちらが弐瓶さんらしいかと言うと、『BLAME!』の方が断然優れている…これは元プロとして高く評価できる作品です。

※ 一つ面白い話をします…『進撃の巨人』の大ヒットで有名になった「諫山創さん」は弐瓶勉さんを師と仰いでいたそうです。
つまり、弐瓶さんの世界観に感化されてあの作品が生まれました…だから巨人はガウナやAIシステムと同様の存在なのです。
お二人の作品の底流に流れる共通のテーマは「閉塞した人間世界(社会)」と「生きる意味を持たない堕落した人間」なのです。



劇場アニメ『BLAME!(探索者)』 予告編

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~ Comment ~


専門家ですものね

こんばんは~
いつもありがとうございます♪

私はアニメは好きで、コミックもですが。
こちらのブログを訪ねるようになって、専門家の目ってすごいなぁって思っています。

けれど、いつも思うのですが、本当にそうなるような、
説得力があるのですよね。(^^♪
#6916[2018/02/01 21:22]  窓  URL  [Edit]

Re: 窓様COありがとうございます^^

> こちらのブログを訪ねるようになって、専門家の目ってすごいなぁって思っています。
> けれど、いつも思うのですが、本当にそうなるような、説得力があるのですよね。(^^♪

作者が何を言いたいか?監督がどう作品を構成してるか?カメラワークはどうか?
人間離れした冷徹な目で見てしまうので、作品にのめり込めない欠点もあるんです(苦笑)
だから、頭を真っ白にして印象に残ったシーンを二度観て、泣いたり笑ったりしてますよ。
良い作品は、やはり原作のテーマがしっかりしていて、監督がそれを理解して構成し、カメラマンや役者(アニメーター)がその良さを引き出してますね^^
#6917[2018/02/01 22:53]  sado jo  URL 

私はアニメはほとんど見たことがないですが、
シドニア(火星の人面岩のある場所)という言葉に
つられてシドニアの騎士のWikiを見ました。
並みのSF小説では太刀打ちできないほどのストーリー
展開ですな。Blameの予告編は難解で、本編を見ても
理解できそうもない。(笑)
#6918[2018/02/02 22:02]  エリアンダー  URL 

Re: エリアンダー様COありがとうございます^^

> 私はアニメはほとんど見たことがないですが、
> シドニア(火星の人面岩のある場所)という言葉に
> つられてシドニアの騎士のWikiを見ました。
> 並みのSF小説では太刀打ちできないほどのストーリー展開ですな。

弐瓶勉さんなど今の漫画家は、本職のSF小説家でも描けない世界観やストーリーで、驚く様な作品を創ってきます…なので漫画だと馬鹿にはできませんよね。
「シドニアの騎士」は、千年前に地球にやってきた奇居子(ガウナ)と言う生物が、人類と共生を始めるんですが、如何せん生きる目的もなく争い合う自堕落な人間に腹を立て、地球を人類ごと破壊します…そして、僅かに難を逃れた人類は、播種船(宇宙に人間の種を残す為の宇宙船)で旅立つのですが、奇居子は人類を宇宙の害虫だとして、地の果てまでも追ってくるんですね。
そして地球滅亡後、千年を経て日本人を中心とした播種船「シドニア号」と、奇居子との激闘が宇宙で繰る広げられると言うストーリーです。
なお、人類の生き残りが乗る各国の播種船は、どうやら奇居子に殲滅されたらしく、シドニア号のクルーだけが人類唯一の生存者なのですが…人類(害虫)を殲滅せんと追ってくる奇居子のしつこさにはほとほと感心します。
私もゴキブリを殲滅しようと追っかけますが、そこまでしつこくはなれませんです(笑)
#6919[2018/02/02 23:04]  sado jo  URL 

はじめまして

はじめまして。常々拝読しております。

今回はちょっと黙っていられなくなったのでコメントしました。

哲学を勉強した人間から言いますと、

そういうニヒリズムは、

独我論と並んで、

「クソ」の代名詞であり、

哲学の名に値しないものであります。

そうした、ヒネた人間がハマりそうな「クソ」のような世のスネかたを、

どう克服して、いかにプラスに変えていくか、

それが西洋哲学2700年の歴史みたいなもんです。

まだ答えは出ていませんし、

ニヒリズムとは克服可能な相手なのかすらわかっていませんが、

簡単に「死」とかをもてあそばれて結論にされても困るのであります(^^;)
#6920[2018/02/03 17:51]  ポール・ブリッツ  URL  [Edit]

Re: ポール・ブリッツ様COありがとうございます^^

> 哲学を勉強した人間から言いますと、
> そういうニヒリズムは、独我論と並んで、「クソ」の代名詞であり、
> 哲学の名に値しないものであります。
> そうした、ヒネた人間がハマりそうな「クソ」のような世のスネかたを、
> どう克服して、いかにプラスに変えていくか、それが西洋哲学2700年の歴史みたいなもんです。

こちらこそ初めまして…お名前はかねがね伺っております^^
ご指摘いたみいります…おっしゃる通りで、私はニヒリズムを推奨している訳ではありません。
寧ろ逆説的に絶望を提示して、悩みもがき、絶望に抗い、それを突き抜けて欲しいと願います。
坂口安吾は「堕ちよ、生きよ」と言いましたが、一旦は絶望して堕ちても、そこからもがいて這い上がるのが人間の条件だと思っています。
尤も自ら命を絶った文豪達を咎めるつもりはありません。彼らは彼らなりに絶望と戦いました。
ただ安易に命を捨ててはならない…向上心を失くしたら、人として生きる価値を失いますから。
答えに辿り着けるかどうかより、今生きているプロセスこそ重要で、結果が全てではないです。
#6921[2018/02/03 20:02]  sado jo  URL 

こんばんわ
専門家の目は凄いなと思いました
#6922[2018/02/04 20:08]  ネリム  URL  [Edit]

Re: ネリム様COありがとうございます^^

> 専門家の目は凄いなと思いました

映画の仕事を離れて30年以上経つんですが、身体に染み付いた感覚は抜けませんね。
つい評論家の先生方と同じ目線で観てしまうので、自分では困ってるんですよ(苦笑)
自分が良いと思った作品が上位にノミネートされるのは嬉しいんですが、普通の観客の様に作品にのめり込んで楽しみたいのがホンネなんです(笑)
#6923[2018/02/05 14:17]  sado jo  URL 














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