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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

その他の小説

ある親子の救われないお話

21-03-08
掲載した写真はイメージです。本人ではありません。

あるニュース記事から拾った最近のアメリカで実際に起きた出来事…『ある親子の救われないお話』を小説にしました。

去る1月6日にトランプ大統領(当時)が支持者を扇動して起こした『米国議会襲撃事件』で警察に逮捕された一人の中年男がいた。
テキサスの石油企業の労働者である彼には、幼い頃から可愛がってきた娘がいた。低学歴の自分と違って秀才肌でデキのいい娘である。
彼の自慢の娘は、その優秀さが評価されて学校の推薦で奨学金を得、アメリカ屈指のエリート大学である『コロンビア大学』に進学した。
彼は懸命に働いてニューヨークにいる娘の為に学資を仕送りした。だが会社は、次第に賃金の安い黒人やメキシコ移民の労働者ばかり雇うようになっていった「随分儲かっているはずなのになぜなんだ?」…彼はそう疑問に思いながらも、同僚が解雇されて行くのを見送った。
石油消費によるCO2の増大がメディアで盛んに批判されて給料も上がらず、娘への仕送りが苦しくなった頃、彼はある人物の演説を聞いた。
「石油や石炭をどんどん使って白人労働者の雇用を守ろう。国境に壁を築いてメキシコ移民を追い出そう。黒人に大きな顔をさせるな」
「そうだ!娘の為にもドナルド・トランプを応援しよう。絶対に彼を大統領にするんだ」こうして彼は熱心なトランプ支持者になった。

一方、その頃ニューヨークにいた彼の娘は、勉強よりアルバイトに懸命に精を出していた。アメリカの大学で学ぶには学費だけで年間3万ドル~5万ドル(320万~530万)が必要である。大半の学生はScholarshipと呼ばれる学生ローン(奨学金)を利用して学費を賄っている。
つまりアメリカの大学生は、進学と同時に奨学金という名のローンを背負って大学で学び、親の仕送りとアルバイトで食い繋いでいる訳なのだ。だから、決して裕福ではない家庭の事情を知っている娘は、何とか親の仕送りの負担を軽くしようと懸命に働いていたのである。
涙が出るほど親思いの善い娘ではないか…彼女は「アメリカの教育制度は裕福な者だけ有利にできている。大学の学費を無料にしよう」と言う民主党のバーニー・サンダースに賛同して応援したが、2016年の大統領選挙は父が熱心に応援したドナルド・トランプが勝利した。
それから暫くして父は娘に自慢した「見ろ!トランプ大統領は労働者の所得税を15%も減税してくれたぞ。やっぱり応援して良かった」
それを聞いた娘は父のバカさ加減に唖然とした…年収500万円の父には、15%の減税はたったの75万円にしかならないが、年収50億円の富裕層には7億5千万円になるのである…父はトランプが本人を含めた富裕層を優遇する減税の裏にあるカラクリを一向に理解してなかった。

それから4年が経って『新型コロナウィルス』がアメリカを襲った。ニューヨークは莫大な感染者や死者を出してロックダウンされ、大学も封鎖になった。勿論そんな状態の街でアルバイトに有りつけるはずもなく、彼女は仕方なく一旦休学して、テキサスの父の元に帰った。
折しも2020年の大統領選挙が始まっていた…足繁くトランプ集会に通う父に「トランプ大統領はニューヨークの市民を見捨てた。コロナの感染拡大に何の対策も取らない。あんな大統領のどこがいいの?」と言う娘に「お前は都会に出て左翼にかぶれてしまった」と嘆いた。
あれほど互いに愛し、思い遣っていた父と娘は完全に断絶状態になってしまった…そして、大統領選挙は民主党のバイデン候補が勝った。
「今回の選挙は不正だ。民主党の奴らが細工して票を盗んだんだ」負けた事が認められない父は、酒の量が増えて周囲に不満を漏らした。
そして憤懣遣る方ない顔をして車に乗って家を飛び出して行った…その翌日の1月6日の事、娘は友人からのMailでトランプ大統領が支持者をけしかけて議会を襲撃させた事を知った。彼女はテレビニュースで暴徒化した支持者が議場を壊すのを見てとてもショックを受けた。
だが、娘のショックはそれで終わらなかった…後日、SNSに掲載された写真を見た友人が「これ、あんたのお父さんじゃない」と知らせてきた。そこには大勢の暴徒に混じった父の顔があった。但し書きには 『指名手配!知っている方は警察にご連絡下さい』 と書かれていた。

 ~THE END~



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政治小説の様に見えるが、実は政治を描いているのではない…歪んだ格差が親子の絆を引き裂いてゆくフィクション風現代社会劇である。
父は少しでも娘に多く学費を送ってやろうと「当選したら移民を排除して、労働者に減税する」と公約したトランプ氏の支持者になった。
裕福でない家で育った娘は、少しでも父の学費負担を軽くしてやろうと、勉強の時間を割いて留年してまでアルバイトに精を出していた。
お互いを愛し思い遣っている素晴らしい親子である。その善良な親子がなぜこんな悲劇的な結末を迎えなければならなかったのだろう?
原因は、例え不法移民でも賃金の安い労働者を雇ってあくなき利潤追求に走る企業と、それを違法と知って後押しする金融・銀行にある。
さらに、そんな異常な構造の資本主義社会をリードしているのが、Amazonのジェフ・ベゾス、TSLAのイーロン・マスク、Facebookのマーク・ザッカーバーグなどの世界的企業家と、彼らに資金を出しているウォーレン・バフェットなどのヘッジファンドCEOと、ロスチャイルド一族やロックフェラー一族などの世界の富を牛耳っている銀行家…つまり、世界の人口の2%にも満たない大富豪達である。
そして、その富豪達に資金を出してもらって右左を問わず政党を結成し、彼らの手先となって民衆を統治しているのが政治家なのである。
※種を明かすとトランプ氏は、溜まった国民の不満をガス抜きするピエロ役として、不動産事業の資金を提供する代りに大統領候補になる様にそそのかされて立候補した。それが金を出した富豪達には予想外の人気を集めてしまい、選挙で当選して大統領になってしまった。
ところが大統領になった途端に好き勝手して…特に国際協調を壊し、自由貿易の邪魔をして富豪達に損させたのでクビにされたのである。


フォーブスのリサーチによる世界の富豪番付 (閲覧しているブラウザで翻訳してご覧下さい)

従って、政治家に「格差を解消してくれ」と頼むのは【政治資金を出してくれているスポンサーに歯向かえ】と言うのと同じなのである。
テレビ局だって金を出しているスポンサーに引かれたら経営が成り立たない。政治家も同じ事…だから、庶民の味方のふりをして威勢のいい事を言う右派ポピュリストや野党政治家に資金を分けてやって、国民の不満が富豪達に向わないようにガス抜きさせているのである。
全て裏で繋がった猿芝居…富豪達が仕組んだ自作自演なのだから庶民は救われない…この善良な親子はその仕組みに潰されたのだった。
 
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~ Comment ~


アメリカは医療費問題のほかに学生ローンの件でも大変みたいです。
一人当たり平均300万円のローンがあって、卒業できなかったり、
ホームレスになったりしているとか。
授業料も日本の10倍近くも高く外国の大学にいく人も増えているらしい。
学生ローンを軽減する方策がたてられていますが、根本的な解決じゃないしね。
昨今の黒人/アジア人差別といいアメリカは病んできてますね。
#8276[2021/04/07 20:55]  エリアンダー  URL 

Re: エリアンダー様COありがとうございます^^

> アメリカは医療費問題のほかに学生ローンの件でも大変みたいです。
> 昨今の黒人/アジア人差別といいアメリカは病んできてますね。

アメリカでは大半の大学生が奨学金の返済…と言う借金を背負って社会人生をスタートします。
アメリカ人の自由意識は少し異常でして、銃を持つのも自由、大学へ行くのも自由、病気を治療するのも自由、マスクをしないのも自由…全て個人の自由に任す放任主義です。
裏を返せば、身を守る為に人を殺すのも自由、金と実力のある者だけが大学に行き、病院で治療を受ければよい…そして、マスクを拒否して人にコロナをうつすのも自由です。
そこには人々を平等に扱う…と言う概念が欠落している。だから差別主義が蔓延し、貧富の格差が異常なまでに開き、互いが助け合わない公共性のない社会になっています。
はて?『自由』は、個人が社会的義務と責任を果たした代償として得られるものではないのか?
アジア人女性が暴漢に襲われても、ドアを閉めて知らんふり…米国は病んでいる国家なのです。
#8277[2021/04/08 13:22]  sado jo  URL 

「全て裏で繋がった猿芝居」。おお!

 フリーメーソンとかイルミナティなど、よくある陰謀論が事実なら、世界を牛耳っている連中には敵いません。庶民は、ジタバタしても、もうどうしょうもないでしょう。
 やはりイエスが述べたように、「人は神と富とに相仕えることはできません」。使徒パウロが述べたように、確かに「金銭に対する愛は諸悪の根源」です。
 といって、具体的にはどうしたらいいのかといえば、解決策はないようです。個人個人の意識が変わるしかないですが、その意識を変えるのは非常に難しいことです。
 日本人にとって、アメリカはかつてはまぶしい国家でしたが、いまは病んでることが明白になっているのですね。
 自由とか人権というのはきれいな響きのある言葉ですが、良識である程度抑制しないと、ひどいことになりますね。
 しかしいつも思うのですが、資本主義は格差社会を作るのが当たり前。といって社会共産主義はまた違う問題があります。
 北欧の国は割合うまくいっているように見えますが、それを真似る国が北欧以外では見受けられないのはどうしてでしょう?
#8278[2021/04/08 15:17]  ☆バーソ☆  URL  [Edit]

Re: バーソ様COありがとうございます^^

> フリーメーソンとかイルミナティなど、よくある陰謀論が事実なら、世界を牛耳っている連中には敵いません。庶民は、ジタバタしても、もうどうしょうもないでしょう。
> 北欧の国は割合うまくいっているように見えますが、それを真似る国が北欧以外では見受けられないのはどうしてでしょう?

金持ちの秘密結社があるかどうかは別として、資本家が金融市場を通じて裏で繋がっているのは事実です…数十~数百億と言う金が動く世界なので庶民には縁がないですね(笑)
世界幸福度ランキングを見ると、フィンランドやノルウェーなどの北欧諸国が断トツ抜けてます。
北欧には「食料の乏しい極寒の地で如何に助け合って生きるか」と言うバイキング時代からの伝統があります…なので北欧の資本家は地域の人々に貢献する事を第一にします。
つまりガツガツしてあちこち手を出す金儲け式でグローバル展開しない…企業の利益の大半は地域貢献の為に使います。なので人々の豊かさが欧米や日本とは段違いなのです。
欧米や日本の資本家は中国に金をつぎ込んだ挙句、相手を強くして逆に中国の侵略に怯えている…「虎に餌を与えて飼ったつもりが逆に食われる」欲ボケの愚か者です(笑)
#8279[2021/04/08 17:51]  sado jo  URL 

こんにちわ
親子でも分かり合えないことはあるなと思いました。
#8280[2021/04/09 14:33]  ネリム  URL  [Edit]

Re: ネリム様COありがとうございます^^

> 親子でも分かり合えないことはあるなと思いました。

子供の自意識を育てるのは、親ではなく周囲の環境ですからね。
子供が親の自由になるのは赤ん坊の時だけで、一歩外に出れば親とは違う人格になります。
接する人との人間関係、受ける教育、時代の潮流などの要素で子供の人格は形成されます。
だから子供に自分と同じ考えを持たそうとする親は、親子関係の破綻や家庭不和を招きます。
#8281[2021/04/10 13:02]  sado jo  URL 














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