シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼まぼろし」
まぼろし 小説本編

まぼろし 第5話 「蝶よ!さらば・・・」 (1)

蝶01

<オリジナル/ファンタジー/ミステリー>

人の目はすべてを見ている訳ではありません。この世には人に見えない世界があります。
これから、あなたの目はあなたの体を離れ、この不思議な時間と空間に入って行くのです。

 ここハリウッドのセレブたちが住むビバリー・ヒルズは、ロスのスラムで生まれた俺にゃあ、生涯縁の無い場所だと思っていた。
 だが、今日の俺にゃあ、宝の山に見えてしょうがない。
 俺は、相棒のレイに目配せして車から降りた。ポケッドの中に忍ばせた、コルト45=ガバメントを握り締めて…
 目の前には、ハリウッドの人気俳優「トニー・クーパー」の豪勢な屋敷があった。

 あれは一週間前の事だった。
 スラムで生まれ、飲んだくれの親父に、ヤク中のお袋を持ったニガーの俺は、ガキの頃から自然と札付きのワルに育った。
 食うために、スリ、車上狙い、窃盗、喝上げ、ヤクの売人、有りとあらゆる犯罪に手を染めて来た。
 そんなんだから、前科は数え切れねぇほどある。
 だが、まだ強盗だけはやった事が無かった。
 それが、たまたま海兵隊上がりの爺さんの家に忍び込んで、偶然お宝をめっけちまった。
 コルト45=ガバメント…牛殺しと言われる軍用拳銃だ。こいつは他のハジキとは全然威力が違う。
 どうやら、俺にも運が巡って来たらしいと思ったもんだ。

 最初は、相棒のレイと一緒に、銀行をやろうと思った。
 だが調べてみると、銀行は思ったよりガードが堅くって、仕方なく個人の屋敷を狙う事にした。
 どうせ狙うなら、豪邸を構えているセレブの屋敷がいい。
 そこで目を付けたのが、ビバリー・ヒルズに住むハリウッド一の人気俳優「トニー・クーパー」の屋敷だったってぇ訳だ。

 個人の屋敷のセキュリティをすり抜けるなんざぁ、俺にとっちゃあ赤子の手を捻るようなもんだ。
 俺は、楽々とクーパーの屋敷のセキュリティを突破して、相棒のレイと玄関の近くまで忍び込んだ。
 窓からのぞき込むと、ちょうど晩飯が終った頃合らしく、広間にはクーパーと、執事と、四、五人のセレブ共がいた。
 奴ら完全にくつろいで油断してやがる。今がチャンスだ!
 ガ~ン!と玄関のドアを蹴破って、俺はレイと一緒に屋敷の中に押し入った。
「動くなっ!ちょっとでも動いたら脳ミソが吹っ飛ぶぞ!」
 俺は、ガバメントを構えて、呆気に取られたまま突っ立っているセレブ共に言った。
「まっ、待て!金はやるから撃たないでくれ」と、あわてたクーパーが言った。
「金庫はどこだ!金庫を開けろ!」俺はクーパーに言った。
「金庫はここじゃあない。二階にある」
「じゃあ、二階まで案内しろ。ただし変なマネはするんじゃねぇぞ!」
「あぁ、分かった。何もしないから、命だけは助けてくれ」
「おぃ、レイ。俺は二階まで行ってお宝を掻っさらって来る。それまでこいつらを見張っとけ!」
「あいよ、相棒。待ってるぜ」と、セレブ共にハジキを突き付けながら、レイはそう返事をした。

 二階に上がると、クーパーはガタガタ震えながら、鍵を取り出して金庫の扉を開けた。
 こいつ完全にブルってやがる。映画じゃあカッコいいヒーローを演じてるくせによ…俺は笑いが込み上げて来た。
 見ると、金庫の中にはサラピンのドル札が山と積まれてあった。他に宝石なんかもどっさりある。
 俺は持って来たナップザックをクーパーに渡して、金庫のお宝をその中に詰め込まさせた。
 ところが、ようやく金庫を空に仕掛かった頃、ジリリ~ン!と階下で通報ベルの鳴る音が聞こえた。
「ちくしょう!レイのやつ、ドジを踏みやがったな」俺はクーパーの頭にハジキを突きつけた。
「まっ、待て!俺がやったんじゃない」
 クーパーはそう弁解しようとしたが、俺がやつの脳天をぶち抜く方が早かった。
 クーパーを殺った俺は、急いでお宝が詰まったナップザックを担いで、一階の広間に下りた。
 そこには、通報ベルを鳴らした執事をバラしたレイが、呆然と突っ立っていた。
「何してやがる!レイ。早いコトズラからねぇとヤバイぞ!」
「あぁ、相棒か。こいつ通報ベルを鳴らしやがって…バラしちまったよ」
「構うもんか。どうせ面を見られたんだ。ついでにこいつらも殺っちまえ!」
 俺は、隅っこの方でガタガタ震えてやがるセレブ共を指差して、レイにそう言った。
 だが、レイのやつが怖気づいちまったんで、仕方なく、俺がガバメントをぶっ放して、セレブ共を片付ける羽目になった。
 全員をぶっ殺すと、俺はナップザックを担いで、停めておいた車に向かって駆け出した。
 車に乗り込んでエンジンを掛けると、もうパトカーのサイレンの音が、すぐそこまで迫って来ていた。
「ぐずぐずするな!早く乗れ、レイ」俺は、後から追っ掛けて来ていたレイに言った。
 その途端に、レイがもんどり打って、道路に転がりやがった。
「ポリ公に足を撃たれたっ!助けてくれ~!」レイはそう叫んだ。
「やかましいっ!」
 俺は、相棒のレイの脳天目掛けて、ガバメントをぶっ放した。
 ポリ公にとっ捕まって、洗いざらい喋られた日にゃあ、足が着いちまうからだ。

 レイを殺った俺は、猛スピードで車を走らせたが、追っ掛けて来たパトカーのポリ公が、ガンガンぶっ放して来やがった。
 お陰で、右に左に弾を避けようとした俺は、ハンドルを切り損ねて、車をガードレールにぶち当てちまった。
「くそったれ~!ついてねぇ!」
 俺は、泣く泣くお宝をあきらめて、車を捨てて走り出した。
 銃声とサイレンの音を聞きつけて、他の屋敷の連中が、玄関まで出て来て外の様子を見ていた。
 無我夢中で走って逃げていた俺が、ふと見ると、どこぞの屋敷の玄関から手招きしている若い白人女が居やがった。
 この俺を手招きするなんざ、妙な女が居るもんだ…?とは思ったが、この際、そんな理由を考えてる余裕なんぞ無かった。
 俺は、とっさにその白人女の家に跳び込んだ。
 俺が女の家に入ると、その白人女はすぐさま玄関のドアを閉めて、鍵を掛けた。
 そうして、油断無くハジキを構えている俺の方を振り向いて、こう言いやがった。

「やっと会えましたわね」

~続く~

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