FC2ブログ

シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

その他の小説

エデンに還る(2)産業革命

21-07-16

<産業革命>
陸地はたぎっていた。
川や湖はすっかり干上がり、赤茶けたむき出しの地表には砂嵐が吹き荒れていた。
焼けただれた地面には、オゾンを失った成層圏から絶え間なく有害な放射線が降り注いでいる。
生き物はとうの昔に死滅した…かって地上を我が物顔で闊歩していた人間と言う種族も今はもういない。
彼らが極限まで自然を簒奪して繁栄を謳歌した高度文明なるものの痕跡も今はわずかしか残っていない。
溶解した極地の氷河が海に流れ出し、都市などの人が住んでいた土地のほとんどが水の中に沈んだからだ。
今はただ生き物のいない焼け付いた陸地が少しばかり海に浮かんでいるだけである。
時折、水平線の彼方に陸の蜃気楼が亡霊の様にゆらゆらと揺れては消えてゆく。
水平線から吹き寄せてくる風は「死にたくなかった。もっともっと生きていたかった」
「誰がこんなにした。こうなる前になぜ何とかしなかった」と恨みを言っているように聞こえる。

兆候は19世紀の産業革命たけなわのイギリスですでに現れていた。
有名な殺人鬼「切り裂きジャック」が巷を騒がしていたロンドンの街でその異変は起きた。
普通なら街燈の灯りが隠れるほど群がってくる「蛾」が急激に減ってしまったのである。
夜行性の昆虫である蛾は、昼間はロンドンの「プラタナス」の街路樹の幹で眠っている。
プラタナスの幹に溶け込む灰白色の蛾の色は、天敵から身を隠せる絶好の保護色になっていた。
ところが工場から排出される煤煙で、プラタナスの幹が煤けて黒くなってしまったのである。
幹に止まっている白い蛾は、嫌でも目立ってしまい天敵である野鳥の餌食になったのだった。

この自然が発したシグナルに気づいたある生物学者が近代文明への警鐘を鳴らした。
だがイギリスはおろか世界中を探しても、彼の言葉に耳を傾ける者などはいなかった。
労働者は下町のパブで安酒に酔い、貴族や資本家は上流サロンで金勘定に浮かれていた。
誰もが自身の快楽を追い求め、大きな富を得て人生を享楽する事ばかりを考えていた。
虫の一つや二つがこの世から消え去ったところで、気にする者はいなかったのである。
ましてや、その出来事が「暗い未来への黙示録」になろうとは考えもしなかった。

~エデンに還る(3)へと続く~

<地球温暖化と感染症>
インド、ミャンマー、タイ、インドネシア、フィリッピン、夏真っ盛りの東南アジア各国で新型コロナの感染が急激に拡大している。
インドで発生したデルタ株には従来のワクチンが効かないらしく、感染防止対策も効果がなくて医療崩壊に見舞われている国もある。
日本では微生物(細菌やウィルス)による感染症が流行するのは、寒い冬の季節が多い…と先入観を持っている人も案外いたりする。
でもそれは大きな勘違いで、外気温の低い時期には微生物が暖かい人間の体内を増殖場所にするから感染症が多発するだけの事である。
CO2排出の影響に伴う地球温暖化が目に見えてはっきりしてきた近年、世界で起きる様々な感染症はかってないほど人類を脅かしている。
HIV、鳥インフルエンザ、MRSA、SARS、エボラ出血熱、デング熱、そして今回の新型コロナ…これほど多種多様な感染症の病原体が数十年ほどの短期間に現れて人の命を奪った記録は歴史上は見当たらない。そうなると感染症の多発は地球温暖化が齎したものと言えるだろう。
なぜならこれらの病原体は全て赤道近くで発生しているからだ…つまり感染症を引き起こす病原体は暑い気候を好んで増殖するのである。
インドで変異した「新型コロナデルタ株」を見ても分かるように、病原体は暑ければ暑いほど活発になり病毒も強大なものになってゆく。
如何に地球温暖化が恐ろしいかがよく理解できよう…「暑い夏は感染しにくいから、ビールでも飲んで盛り上がろう」ではないのである。
地球温暖化が人類に及ぼす災厄は計り知れない…すでに中国の雲南省に棲息するコウモリから、新型コロナよりも遥かに毒性が強いウィルスも発見されている。ただ、目下の所は人には感染しないだけの事である。人間が接触した場合にどんな変異を遂げるか?保障はない。



2100年 夏の天気予報 ( NHKニュース)
40℃の高熱にうなされているコロナ患者を想像してみて下さい。未来は誰もが息をしているだけで苦しい状況になると思います。
人は気温の下がる夜間だけ学び・働いて、昼間はほどよく冷やされた棺桶型の冷却カプセルの中で寝て過ごす事になるでしょう(笑)
そう…もはや人間は太陽の日差しには耐えられません。極度に温暖化した未来の地球では吸血鬼と同じ夜行生物になるしかないのです。
ただし吸血鬼の様な不老不死の身体にはなれません。太陽に当たれない肉体は老化が早くなり、寿命はむしろ縮むでしょう。


ブログランキング・にほんブログ村へ 
▲クリックをよろしくお願いします▲
 
関連記事
スポンサーサイト



もくじ  3kaku_s_L.png やさしい刑事
もくじ  3kaku_s_L.png まぼろし
もくじ  3kaku_s_L.png 未来戦艦大和
もくじ  3kaku_s_L.png ゴジラの子守歌
総もくじ 3kaku_s_L.png その他の小説
もくじ  3kaku_s_L.png 随想/論文集
もくじ  3kaku_s_L.png オリジナル詩集
もくじ  3kaku_s_L.png 死とは何か?
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
  ↑記事冒頭へ  
←エデンに還る(3)世界大戦    →エデンに還る(1)海棲哺乳類
*Edit TB(0) | CO(4)

~ Comment ~


人生の道は自由選択。

 joさんは小説づくりがうまいですね。
 目に付いたのは、「陸地はたぎっていた」「赤茶けたむき出しの地表」「とうの昔に」「自然を簒奪して」のほかに、「時折、水平線の彼方に陸の蜃気楼が亡霊の様にゆらゆらと揺れては消えてゆく。水平線から吹き寄せてくる風は『死にたくなかった。もっともっと生きていたかった』『誰がこんなにした。こうなる前になぜ何とかしなかった』と恨みを言っているように聞こえる」、そして最後の「ましてや、その出来事が『暗い未来への黙示録』になろうとは考えもしなかった」のところで、なかなか言い回しがカッコいいですね。

 ロンドンの蛾の話は、工場の煤煙に合わせて蛾の色が黒くなったとして、進化論の証拠とされたことがありますが、色が黒っぽいのが生き残ったので目立つだけだろうと反論されたようです。

 極地の氷が解けて海水面が上昇するという地球温暖化の話をNHKがすると、そうかと思いやすいですが、氷の重さは「氷が水に浸かっている部分の体積に相当する水の重さ」と同じで、 氷が溶けて水になっても重さは変わらないため、水の体積は氷のときに水に浸かっていた部分の体積と同じになり、氷が溶けても水位は変わらないという反論もあります。
 
 彗星探索家の木内鶴彦さんは、臨死体験中、未来の地球を見たいと思ったら、鮮明ではない二つのビジョンが二重写しの写真のように見えたそうです。一つは廃墟で愕然としている自分。もう一つは緑の多い場所で星を見ている自分。
 異なる二つのビジョンが見えたとは、未来がまだ確定してないことを示す。どちらの未来を手にするかは自分の選択によって決まる、と木内さんは考えたそうです。
 https://barso.blog.fc2.com/blog-entry-102.html#more

 さて、未来の人間は、夜行性生物になるか。それともAIを活用するミュータント的生物になるか。しかし、その前に自分が存在しなくなりそうなのが残念です。(笑)
#8342[2021/07/16 09:09]  ☆バーソ☆  URL  [Edit]

Re: バーソ様COありがとうございます^^

> joさんは小説づくりがうまいですね。
> ロンドンの蛾の話は、工場の煤煙に合わせて蛾の色が黒くなったとして、進化論の証拠とされたことがありますが、
> 水の体積は氷のときに水に浸かっていた部分の体積と同じになり、氷が溶けても水位は変わらないという反論もあります。

ありがとうございます^^…映像界の出身なので、頭に浮かんだ絵をそのまま綴っています。
確かに人工的な要因(工場の煤煙)で消滅した蛾を、進化論を用いて語るのは間違いですね。
それだと人間が狼を品種改良して作ったチワワにも進化論が適用される矛盾が生じます(笑)
現に「キリバス」や「モルディブ」などの島嶼国家は温暖化で水没の危機に見舞われていますから「同等の体積なので水位は変化しない論」には無理があります。
未来の地球環境がたった一種類の生物(人間)次第で決まる…などと言うのは地球誕生以来なかった事です。逆に言えば、滅ぶも、栄えるも人類の自己責任だと言う事です。
昼間は眠って、夜活動する吸血鬼には憧れますが、年中熱い太陽に焼かれるのは御免です(笑)
#8343[2021/07/16 13:53]  sado jo  URL 

こんにちは

私も進化論を語る話の中でこの蛾の事を読んだことがあります。
そして公害が減って木の色が白色に戻ってきた時、
今度は黒い蛾が減って、また白い蛾が増えました。
この話を読んで、突然変異とか適者生存とかがかなり
短いスパンで起こることに驚きました。
#8344[2021/07/21 11:31]  エリアンダー  URL 

Re: エリアンダー様COありがとうございます^^

> この話を読んで、突然変異とか適者生存とかがかなり短いスパンで起こることに驚きました。

オゾン層の破壊によって貴重な有袋類タスマニアデビルに皮膚癌が流行し、危うく絶滅しそうになった…ところが突然彼らの幼体が繁殖活動を始めて幼くして出産する様になった。
生存の危機に瀕した種は、生き延びる為に僅かな期間で劇的に生態を変化させる事があります。
ロンドンの蛾の模様の変化は、人間の産業活動が自然に悪影響を及ぼした最初の例になります。
だが地球が誕生して以来、自然環境を変容させる様な生物が出現したのは初めてと言う事です。
自身は元より他の生物の生存も左右する…人間と言う種はある意味モンスターかも知れません。
#8345[2021/07/21 14:10]  sado jo  URL 














管理者にだけ表示を許可する

~ Trackback ~


  ↑記事冒頭へ  
←エデンに還る(3)世界大戦    →エデンに還る(1)海棲哺乳類