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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

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エデンに還る(4)環境破壊

21-08-12

<環境破壊>
突然、眼がチカチカして涙が出る。喉がヒリヒリと痛み出す。
激しい咳が止まらない。胸が苦しくなって血の混った痰が出る。
急に手足が痺れて関節がむくむ。やがて身体中に焼けるような痛みが走る。
聞いた事も見た事もないような病気が都市や工場のある地域で発生した。

住民からの訴えを受けた行政は、しぶしぶ地域の環境調査に乗り出した。
水銀、鉛、コバルト、カドミュウム、硫酸、シアン、クロム、オキシダン
空気や水からは人体に有害なありとあらゆる高濃度の化学物質が検出された。
だが政府や地方自治体は、企業や工場と病気との因果関係を否定しようとした。
彼らにとっては企業や工場は大切な税収源であり、選挙の支援者だったからだ。
当然、行政を預かる役人や議員にスポンサーを裁くだけの勇気はなかった。

被害者たちはうやむやにしようとする行政や企業を相手取って裁判を起こした。
訴えられた行政や企業は公害病に苦しむ被害者を「反体制派」呼ばわりして貶めた。
人々はそれを「自分たちの地域でなくて良かった」と他人事のように傍観していた。
いずれは必ず自分たちの身にも降りかかる最悪を、ただ黙って見過ごしたのだった。
彼らは地球の空や陸や海は、ひと続きに繋がっている事を考えようともしなかった。

公害騒動は人類にとって最初で最期の引き返すチャンスだったのかも知れない。
自らが身の回りの汚染に気づき、自身で初めて環境破壊を阻止しようとしたからである。
だがそのささやかな努力は、政府や企業の利益を優先する巨大な圧力に拉がれてしまった。
たくさんの企業が汚染問題にうるさい先進国を捨てて、規制の緩い途上国に工場を移した。
バラックが立ち並ぶ貧しい国々の空にスモッグが立ち込め、川や海はヘドロに覆われた。
こうして先進国は豊かさの象徴である産業と共に、環境汚染を世界に輸出したのだった。

人間ほど危険を察知する能力が鈍く、危機意識が低い生物は他にはいない。
他の生物だったら周囲に違和感を感じただけで、身に危険が迫っている事を察知する。
ところが人間は不都合な事実を前にしても引き返さないどころか、逃げ出しもしない。
炎が迫っているのに、金や家財などの財産を運び出そうとするのは人間だけである。
戦場で死ぬかも知れないのに、あえて国の命令に従って兵士になるのも人間だけである。
失くした物は再び得られる。焼けた家は建て直せばよい。国は滅びても人は生きられる。
だが失われた命は二度と取り戻せない…なのに代用品を後生大事に抱いて命を軽んじる。
人間は奇妙奇天烈で整合性がない矛盾だらけの生物である…滅ぶのも道理かも知れない。

~エデンに還る(5)へと続く~


東宝映画「ゴジラ対ヘドラ」(1971年:特撮 円谷英二)主題歌
汚染された環境から生じた「怪獣ヘドラ」…工場から排出される有毒物質による公害が問題になっていた昭和時代に作られた映画です。
半世紀も前にすでに現れていた環境汚染を、利益優先の対策で放置してしまった事が今日の地球温暖化の危機に繋がってしまいました。


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世界的なパンデミックなどどこ吹く風で莫大な利益を挙げている…アメリカを中心とした世界のネットIT企業に奇妙な異変が起きている。
ネットIT企業で働く若者が団体を結成し、経営陣や株主に対して経営方針や投資のやり方について厳しい注文を突き付けているのである。
そう言うと古い人間は労働組合の労使交渉を連想してしまうが、要求は労働者の賃上げや時短などの待遇改善とはまったく異なっている。
若者は自分達の事ではなく「経営者はもっと世界に目を向けろ」「利益よりも社会を良くする為に金を使え」と言い出してきたのである。
ネットIT企業に限らずとかく資本家は視野が狭い…自分の利害に関わる人間としか付き合わず、金に縁のない庶民は見下して話もしない。
ところがネットIT企業で働く若者達は、嫌でも世界各地の利害とは関係ない大勢の人と繋がりを持たなければ仕事そのものが成立しない。
なので資本家が交際している狭い範囲の業界人とは比べ物にならない多様な人々と接触し、世界中の膨大な情報を共有しているのである。
彼らは世界の片隅で何が起きているかを誰よりも早く知り、同じ若者達と意見を交換し合っている…それが金以外の事に危機感のない鈍感な資本家とのギャップを生み、彼らをして企業経営者や株主に意見して経営方針や投資先を再考させる原動力となっているのである。
最近よく聞く「カーボンニュートラル」や「脱プラスチック」への投資も彼ら若者がネットで始めたのが切っ掛けで世界に広がって行った。
実は「環境保護団体」や「人権擁護団体」「動物愛護団体」などのNGOに最もたくさんの寄付をしているのは、富裕層ではなく若者なのである。
ネットには「差別」や「誹謗中傷」と言った悪の側面もある…だが若者達が「善の種」を蒔くのであればそれは人類の未来を救う希望になる。
今回のオリンピックで一番感動したのは、スケートボードで敗れて泣く「岡本碧優」に、各国の選手が人種も国も乗り越えて駆け寄り、担ぎ挙げて健闘を讃えた場面だった…頑迷な中高年に人類救済を期待するのは無駄だろうが、彼ら若者には希望を託せる様な気がする。
 
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~ Comment ~


 動画を見ました。まあ、汚らしくて、宮崎作品や新海作品とは真逆の映画ですね。
 当時は公害問題が世間の関心事であったとしても、その頃の少年少女がそんな問題に関心があったとは思えず、あったとしても、この映画は楽しめなかったのではないかというのが第一印象で、第二印象は、じつにつまらない音楽だということです。聴いていて、歌詞はともあれ、メロディのひどさに情けなくなりました。
 アニメに必要な(と思える)夢とロマンが欠けています。希望と明るさと楽しさも欠けているように感じます。
 むろん、プロの目から見れば何らかの工夫や新機軸があるのでしょうが、それが分からないために良さが分かりません。ゴジラが飛ぶのもその一つかもしれないですが、子供向けだとしても、当時の特撮レベルはこんなものだったのですね。ただ、先の五輪開会式で、ゴジラやウルトラマンや最近のキャラクターが出てきたら面白かったのにと思いました。
 しかし一方で、社会問題を追求するという視点で見れば、地球環境の問題を取り上げた画期的なアニメ作品と言えるのでしょうか。
 企業の金儲け主義による環境悪化は、住民や第三者が指摘しないで放置していると、ますます悪くなるでしょうから、こういう社会派映画も必要なんでしょうが、この映画は当たらなかったのではないですか。
 酷評ばかりで、懐かしい思い出と共に、正論を真面目に論じたJOさんには大変申し訳ないですが、大体が私は青少年時代は洋画専門で、アメリカ音楽にかぶれていて、マンガもほとんど読まず、『ウルトラマンシリーズ』も観たことがない、変わり者の対象外の人間ですから、どうぞ気にしないでください。m(__)m
#8356[2021/08/12 20:24]  ☆バーソ☆  URL  [Edit]

Re: バーソ様COありがとうございます^^

> 動画を見ました。まあ、汚らしくて、宮崎作品や新海作品とは真逆の映画ですね。
> しかし一方で、社会問題を追求するという視点で見れば、地球環境の問題を取り上げた画期的な作品と言えるのでしょうか。
> 企業の金儲け主義による環境悪化は、住民や第三者が指摘しないで放置していると、ますます悪くなるでしょうから

公害テーマだから汚いのは仕方ないが、エンタメ要素を盛りすぎて環境問題がぼやけてますね。
本来のゴジラは、アメリカの核実験で被爆した第五福竜丸事件をテーマにした社会派映画でした。
表立って批判はできないから、怪獣映画と言う形を借りてアメリカ政府を暗に非難した訳です。
けれど大国に物言う東宝の社会正義か?と思ってはいけません…なぜなら戦後まもなく、その同じ東宝がGHQに指示されて労働組合の大弾圧(東宝事件)をやっているからです。
表の顔は奇麗に見える大企業は、実は「利益の為なら大衆の犠牲は已む無し」と言う汚れた裏の顔を持っています…環境破壊にも人権弾圧にも、そんな大企業の裏の顔が出ています。
現に三菱もトヨタも伊藤忠も、表向きは「日中友好」名目で、裏では利益の為に習近平=中国共産党の人権弾圧に力を貸してます。ユニクロの柳井会長ばかり責めるのは間違いです。
#8357[2021/08/13 13:46]  sado jo  URL 

こんにちは

この歌初めて目にし、初めて聞きました。
歌詞がすごいです、公害物質全部を織り込んでます。
ヘドラって汚らしい名前ですが、まあヘドロを食べて
成長するんですから。
ヘドラはゴジラに倒されてもまたヘドロから新しいヘドラが甦る
というような不気味なラストだったような気がします。

昨日NHKで「地球温暖化はウソ?」というドキュメントを
放送していました。
アメリカでは「地球温暖化懐疑論」が活発になされていて、
その裏には、CO2削減政策によって損失を被る石油業界による
活動ががある、という内容でした。
#8358[2021/08/13 16:44]  エリアンダー  URL 

Re: エリアンダー様COありがとうございます^^

> ヘドラはゴジラに倒されてもまたヘドロから新しいヘドラが甦る
> アメリカでは「地球温暖化懐疑論」が活発になされていて、
> その裏にはCO2削減政策によって損失を被る石油業界による活動がある、という内容でした。

おっしゃる通り蘇ってます…ヘドラは石油を食べてCO2を吐き出す炭素怪獣に進化しました。身体に「経団連」のマークが入ってたら皮肉たっぷりで笑えますけどね(笑)
アメリカで地球温暖化を否定し、コロナワクチンを拒否するのは中西部の人が多いですよね。
テキサスのアボット知事は「マスク着用禁止条例」を出して、逆にコロナ規制反対を煽ってます。
あの辺は石油関連産業が多く、人々は温暖化やコロナよりも失業する方が怖い…その弱みを利用して企業集団が裏で糸を引いているらしいです。
人の健康や命よりも株主の利益を優先する…資本主義企業の裏の顔は恐ろしいものがあります。
「便利だから、楽だから…」で人々が工業製品を使用し続けたら、地獄を見るかも知れません。
#8359[2021/08/14 13:16]  sado jo  URL 

私の子供のころは公害問題が新聞などで活発に取り上げられていたのを思い出しました。
それを「叩かれるから国内はやめて」、「うるさいことを言われない海外に持っていく」を各国が繰り返したわけですね……。

自分だけ心地よければよそはどうなってもいい、が人類共通なのは困ったものですね……。
#8360[2021/08/14 22:31]  椿  URL 

Re: 椿様COありがとうございます^^

> 私の子供のころは公害問題が新聞などで活発に取り上げられていたのを思い出しました。
> それを「うるさいことを言われない海外に持っていく」を各国が繰り返したわけですね……。

今もそうですが、欧米諸国の政府が資本主義企業の言いなりになってしまった時代でした。
資本家連中は、儲かりそうな途上国に軍隊を送って地ならしをさせて安全にしてから進出する。
力と金で無理やり言う事をきかせるから地元民の反発を招いて、反乱やテロが次々に起り出す。
終い目に手に負えなくなって、アフガンの様に地元民を放ったらかしにして引き上げてしまう。
捨てられた地元民は難民となって元凶を作った欧米に流れ込む…そして差別や格差を生み出す。
後に残った住民は、政治空白を狙っていた独裁者と彼らを支援する中国やロシアに支配される。
結局は敵対する中国やロシアを利益しただけ…「自分さえよければいい」「金が儲かりさえすればいい」と言う資本家のエゴイズムが今の混乱した世界を作り出したのです。
#8361[2021/08/15 13:43]  sado jo  URL 














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