シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼まぼろし」
まぼろし 小説本編

まぼろし 第5話 「蝶よ!さらば・・・」 (2)

蝶02

 はぁ?この女は何を言ってやがるんだ…?ニガーのこの俺に、白人女の知り合いなんぞ居ねぇ…
 俺がきょとんとしていると、白人女はハジキを構えている俺を、恐れもせずに近寄って来て言った。

「私を覚えていらっしゃらないのですか?」

 そう言われりゃあ見覚えのある顔だ…あぁ、そうだ!そうだ!思い出した。
 確か「バタフライ」と言う映画で、アカデミー賞を取った「フェアリー・シュミット」とか言う清純派女優だ。でも何で…?
「喉が渇いていらっしゃるんでしょ…お飲み物をお出ししますわ」
 白人女はそう言うと、怪訝な顔をしている俺を、キッチン・カウンターの椅子に座らせた。
 そう言やぁ緊張ずくめの連続で、俺は喉がカラッカラに渇いていた。
 白人女は暖かいミルクを出して、美味そうなパイまで焼いてくれた。
 何だってこの白人女は俺みたいな人殺しのニガーに親切にしやがるんだ…?と思ったが、まずは飲んで食って落ち着く事が先決だった。
 そうして俺がガツガツとパイを食っていると、フェアリー・シュミットとか言う白人女は、親しげに俺の隣に座りやがった。
 何とも言えない女の甘い香りが鼻を突いて来て、もよおしちまった俺は、そのまんま白人女を床に押し倒した。
 声を上げられてはマズい!と思った俺は、白人女の口を手で塞いだが、不思議な事に、女はまったく抵抗しなかった。
 それどころか、俺のズボンを自分で下ろして、尺八サービスまでして来やがった。
 ははぁ~、こいつは清純派女優だとか何とか言いながら、実は男に飢えてやがったんだな…と俺は思った。
 そうして、俺が女にサービスされて気持ち良くなって来た頃、突然、玄関のドアを叩く音がした。
「シュミットさん。シュミットさん。警察の者ですが、ドアを開けて下さい」
 しまった!ポリ公の野郎、もう嗅ぎ付けて来やがった!…俺はそう思った。
 白人女は行為を止めて立ち上がると、なぜか俺にカウンターの後ろに隠れるように言った。
 まさか俺をポリ公に売るんじゃあるまいな…?まぁいい、いざとなりゃ、ハジキをぶっ放して逃げるだけだ。
 俺が急いでカウンターの後ろに隠れると、女は鍵を外して、玄関のドアを開けた。
「凶悪犯が逃げ込んだと言う通報があって見に来ましたが、誰か怪しい者を見掛けませんでしたか?」
「いいぇ、誰も来ていません」
 女はそう答えたが、ポリ公の野郎は、どうやら女の衣服が乱れている事に感づいちまったらしい。
「もしや、誰かに脅されてるんじゃ無いですか?シュミットさん」
「いいぇ、そんな事は…」
 白人女は衣服の乱れを直しながら、あわてて取り繕ったが、ポリ公はカウンターの方を向いて怒鳴りやがった。
「おいっ!そこに隠れてるのは分かってるんだ。出て来い!」
 目っかっちまった!くそぉ~!こうなりゃ破れかぶれだ!
 俺はカウンターから顔を出すと、二人のポリ公目掛けてガバメントをぶっ放した。
 一人のポリ公が、俺の鉛弾を喰らって、もんどり打ってひっくり返りやがった。
 その隙に、俺はカウンターから跳び出して逃げようとした。
 ところがもう一人のやつが、逃げ出そうとした俺を目掛けて銃を発射した。
 俺は、やられたっ!と思った…だが次の瞬間、まるで蝶のような人影がヒラリ!と俺の前に跳んで来た。
 そうして、俺の目の前には、胸に真っ赤な血のバラを咲かせた、あの白人女が倒れていた。
 俺は、思わず逃げるのも忘れて、親切に俺を匿ってくれた女を抱き上げた。

「ありがとう。貴方のお陰で今日まで生きて来られました」

 白人女はうっすら目を開けて、俺の顔を見て微笑むと、そのまんま事切れちまった。
 死んだ女を床に寝かせると、俺の手には血では無く、鱗粉がべったりと着いていた。

 そして、俺は遠い昔の出来事を思い出した。
 ガキの頃、水溜りに落ちてもがき苦しんでいた蝶を助けてやった事があったのを…
 俺は柄にも無く声を上げて泣いた。涙があふれ出て来て止まらなかった。
 駆け付けたポリ公共が、俺の上にのし掛かって来て、俺は後ろ手にガチャリ!と手錠をはめられた。
 それが、すべての一巻の終わりだった。

 俺を警察署に連行するパトカーの中で、ポリ公の野郎共が話をしていた
「なぁ、ボビー。何であの女は、ヤツみたいな薄汚いニガーをかばったんだろうな?」
「さぁな、女は気まぐれって言うからな…俺にゃあ分からんよ」
 だけど俺は本当の事を知っていた。

 俺はこのまんま電気椅子に乗っかって、地獄行きになるだろう。
 だけど神様…こんな人殺しのニガーの願いを聞いてもらえるのなら…
 どうかあの女…いや、蝶の魂だけは天国に迎えてやって下さい。
 俺は生まれて初めて、本気で神様に祈った。

今は亡き 金城哲夫先生を偲んで…

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~ Comment ~


勢いがあって、どうしてこうなるを考える前にお話が終わってた。

唐突に急変する脈絡の無さが短編らしいといえる(´・ω・`)

「蝶」と「バタフライ」で「蝶よさらば」が繋がった。
短編はキーワードが重要だと思う。
#141[2014/04/19 18:48]  月歩(つきほ)  URL  [Edit]

Re: 月歩さんのおっしゃる通りですね^^

> 勢いがあって、どうしてこうなるを考える前にお話が終わってた。
> 唐突に急変する脈絡の無さが短編らしいといえる(´・ω・`)
> 「蝶」と「バタフライ」で「蝶よさらば」が繋がった。
> 短編はキーワードが重要だと思う。

短編は映画で言う「ジェットコースター・ムービー」あっ!あっ!あっ!と、言ってる内にオチが来る(笑)
「女優の正体は、実は昔助けた蝶だった」と言うファンタジー・アクションドラマでした。

例え相手が悪人でも、好きな恩人の為に、懸命に尽くす女心がとってもいじらしい…
でも、それに気づいた時はすでに遅かった…男にはありがちな事…昔の自分を反省してます。えぇ(;ω;)
#142[2014/04/19 19:49]  sado jo  URL  [Edit]

まずは優勝おめでとうございます♪
(^▽^)/

蝶よ、さらば
読ませて頂きました。
ギリシャ神話のエロスとプシュケの逸話に思いを馳せてしまいました♪

#143[2014/04/19 20:17]  小奈鳩ユウ  URL  [Edit]

Re: 拍手・COありがとうございます^^

> まずは優勝おめでとうございます♪ (^▽^)/
いぇ、あなたこそ、本業の詩で優勝されてる本物の詩人ですよ^^私のは副業のおまけ(笑)

> 蝶よ、さらば
> 読ませて頂きました。
> ギリシャ神話のエロスとプシュケの逸話に思いを馳せてしまいました♪
いぇいぇ、神話なんて大層なものじゃなくて、女性に対する、男の単なる反省文ですよ(笑)
「やさしくしてやれなくて、済まんかったな~…」なんて…今更言っても、遅いわなぁ~(;ω;)
#144[2014/04/19 20:46]  sado jo  URL  [Edit]

sado jo様へ

今晩は。sado joさん。

先に 優勝おめでとうございます♪
お友だちが 快挙を果たすのはとても嬉しいです♪(笑)

蝶よ!さらば…
鶴の恩返しのような 女性ならではの 相手に対する慈しみ
愛おしさ それが 悲恋で終わってしまう … だからこそ美しいのか…。
どんな凶悪犯にも 自分に優しくしてくれた人に対して
思いやりの心を 持つことができると 儚い愁いを感じました。

またお邪魔致しますね♪
#146[2014/04/19 23:45]  クロエ  URL  [Edit]

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
#147[2014/04/20 00:52]     

Re: クロエ様 ありがとうございます^^

> 先に 優勝おめでとうございます♪
> お友だちが 快挙を果たすのはとても嬉しいです♪(笑)
ありがとうございます^^でも、本業の小説の部門には、文が長すぎて出品できないでいます(苦笑)

> 蝶よ!さらば…
> 鶴の恩返しのような 女性ならではの 相手に対する慈しみ
> 愛おしさ それが 悲恋で終わってしまう … だからこそ美しいのか…。
> どんな凶悪犯にも 自分に優しくしてくれた人に対して
> 思いやりの心を 持つことができると 儚い愁いを感じました。

しまった!見破られましたか~…さすがに女性の勘は鋭い(笑)
どんな「凶悪犯」をも愛しむ…実は、その女性のいちずな恋心が、小説のヒントになったのでございます。
見破っていただいたお礼に、貴女に小説のヒントになった曲 <再会> 唄:松尾和子 を捧げましょう^^
#148[2014/04/20 02:08]  sado jo  URL  [Edit]

Re: C様 こちらこそありがとうございます^^

ありがとうございます^^そうですか~「ラスカルの春」は、女性好みの乙女ちっくなファンタジーでしたよね♪
>
> なぜ彼には彼女があの蝶だと分かったのでしょうか、映像があれば見てみたくなりました。
> 次の作品も楽しみにしています。

男をかばって死んだ「バタフライ」の女優の体から出た蝶の「鱗粉」が思い出させる切っ掛けになったのですね。
それ以前に「フェアリー・シュミット」(蝶の妖精)と言う名前も、思い出すヒントになったのではないでしょうか?

次の作品は「写し世」を予定しております。
人の存在意義に疑問を投げ掛ける、ちょっぴり恐いお話になるかも知れません(笑)

ひとまず、リンクさせていただきますが、ご都合が悪ければご遠慮なくおっしゃって下さいね^^
#150[2014/04/20 09:02]  sado jo  URL  [Edit]

再度

こんにちはsado joさん。

再度読ませていただいて クロエの時と同じ気持ちになりました。
Sado joさんの小説は いつも思いやりに溢れていますね。
お人柄が伺えます。読ませていただき有難うございました。
#457[2014/07/12 11:49]  花音  URL  [Edit]

Re: k様 COありがとうございます^^

そう言っていただくと、大変恐縮します。
色んな人生経験をしたせいか、なぜ、あれがこうなるのか?
なぜ、昨日まで幸福だった人が、突然不幸に見舞われるのか?
そんな因果の不条理が、書くものに表われて来るんでしょうね^^
#458[2014/07/12 17:27]  sado jo  URL  [Edit]














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