シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼クロニクル ~カルマ~」
クロニクル ~カルマ~ 小説本編

クロニクル ~カルマ~ 第1話「ムー大陸の最期」

ムー大陸

<オリジナル/SF/ファンタジー>

 私は海が好きだ。
 ここ「ナイラーク」は、ムー大陸の南にあり、広大な平野と、美しい海を持つ国だ。
 私は小さい頃、船乗りだった父親にずいぶんと憧れたものだった。
 その父親から、海の彼方には「希望の大地」があると言う話を聞かされて育った。
 私も船乗りになりたかったのだが、父親が海で死んでから、母親に泣きつかれて、船乗りになる夢はあきらめた。
 私の名はラスキン。ナイラークの南端にあるアミリク水族園で、海洋生物の研究をしている学芸員だ。
 一応、大学で講師もしていて、特に鯨の生態についての論文を書いている。
 この水族園にある、海と繋がっている巨大なプールには、ありとあらゆる種類の鯨が飼われている。
 鯨を観察していて面白いのは、繁殖期を迎えた鯨たちが、自分とは違う毛色の変わった相手に興味を示す事だ。
 ほおって置くと、鯨たちは、盛んに毛色の変わった異種と交配をし、亜種を生み出そうとする。
 不思議な事に、そんな亜種は決まって生命力が強く、身体能力が高くって、鯨で言うなら美形である事が多い。
 生物のDNAとは不思議なものだ。
 本能的に自分とは異なる相手を選び、いかなる環境の変化にも対応できる、強靭な生命体を作り出そうとする。

 ついこの前まで、この水族園は、たくさんの家族連れや若いカップルでにぎわっていた。
 子供たちが、人なつっこく寄って来る子鯨たちの頭を撫でたりして、楽しんで遊んでいたものだ。
 だが最近では、客足もすっかり遠のき、水族園は閑散としている。
 北隣にある大国「アシュロ」との間で、民族紛争が起きてしまったからだ。
「お前が先に手を出した!」「いや、お前の方が悪い!」と、まるで子供の喧嘩のような有様になっている。
 今日もアシュロとの国境付近で、ナイラーク人とアシュロ人が衝突し、数十人の死者が出た、と言うニュースが報道されていた。
 なぜ、こんなにも人心が荒んでいるのか?と考えたら、どうも、大陸の地盤が不安定になっているせいではないか?と私は思う。
 ここしばらく、ムー大陸ではあちらこちらで地震が起きて、海底火山の噴火や高潮などの海洋異常も見られる。
 私は、地殻変動の前触れではないか?と思うのだが、地質学者たちは、一時的な現象に過ぎない、とそれを否定している。
 人心が荒れているのも、人が拠って立つ大地が不安定なせいだと思うが、精神心理学者たちは、根拠の無い空論だと馬鹿にする。

 私が大プールの前で、鯨たちの観察をしていると、後輩のネオーギンが、大きな買い物袋を抱えてやって来た。
 聞けば、新婚間も無いアシュロ人の奥さんが、外に出ると嫌がらせをされるそうで、代わりに自分が買い物をしているのだと言う。
 何と町の連中も、心の狭い事だろうか…アシュロ人と言うだけで、関係無い人までがとばっちりを受けている。
 だから、私はこんな争い事には反対だ…だが、それを言うと、私までが周りから非国民扱いされる有様なのだ。
 昔から、アシュロ人のナショナリストたちは、自分たちは卓越した民族で、ナイラーク人は二階級下の下等な民族だと言って来た。
 だが、そんな言い草が「真っ赤な嘘」である事は、まともな教育を受けた人間なら、誰でもが知っている。
 有史以来、ムー大陸はおろか、ここから移民した人が住むアトランティス大陸まで、純潔種など一人もいない事を…
 長いムー大陸の歴史の中で、どこの民族も他民族との混血が進んで、血が混り合い、今や純潔民族などどこにも存在しないのだ。
 誰に吹き込まれたのか…?そんな愚にも着かぬ選民思想の幻想を抱いた者たちが、互いに争い合って血を流している
 ほんの一部の過激的な思想を持つ者たちのために、迷惑を蒙っているのは、普通に生活している一般市民なのだ。
 しかも、ナイラークとアシュロの混乱をよい事に、漁夫の利を得ようとする者たちまで現れる始末だ。
 確かに、広い平野を覆う穀倉地帯と、外洋に面した良港を持つナイラークは、どこの国にとっても魅力的な土地だろう。
 同じムー大陸のUEC連邦や、アトランティス大陸にあるカリメアが、利権を伺って来るのも、うなづける話ではある。

 だが、政治などより、生物を研究して来た私が思うのは、何と生物のDNAは矛盾した性質を持っているのだろうか?と言う事だ。
 一方で、盛んに異種交配を促進し、高度で美形の生命体を作り出すかと思えば、一方では自己のみの繁栄を図り、他の者を排斥しようとする。
 そして、そのDNAの性質が、ありとあらゆる争い事の根本原因にもなっているのだ。
 人々が口にする思想だのイデオロギーだのと言うものは、単なる後付けの言い訳にしか過ぎない。
 現にムー大陸でも、時代ごとに思想やイデオロギーはコロコロ変わり、言わば根無し草のように無意味なものでしか無かった。
 そんな頼り無いものを拠りどころにして、誰かに踊らされている人々は哀れと言う他は無い。
 そう考えると、しょせん、彼らはDNAに操られている人形でしかないのだろうか?

≫続きを読む≪ から話の続きをごらん下さい


 大陸のあちこちで天変地異による災害が起きているにも関らず、馬鹿げた紛争は拡大の一途をたどった。
 そうして、とうとうアシュロ軍は国境を越えてナイラークに侵攻を始め、ナイラーク軍と交戦状態になった。
 数の上で優勢なアシュロ軍は、ナイラーク軍を圧倒したが、待ってましたとばかり、UEC連邦とカリメアの連合軍が参戦して来た。
 科学力と工業力に勝るUEC連邦とカリメアの連合軍は、最新鋭の兵器を駆使して、一気呵成にアシュロ軍を破って敗走させた。
 しかし、追い詰められたアシュロ軍は、とうとう最終兵器である天の火…町を焼き尽くすオリハルコンの火矢を放った。
 ナイラークのいくつもの町に降り注いだオリハルコンの火矢は、町を焼き尽くし、数百万人の人々が死んだ。
 人が為した愚行に、大陸の神「ムー・バギ」が怒りをあらわにし、大地がグラグラと鳴動し始めた。

 私は急いでネオーギンを始め、これまで親しくして来た人々に呼び掛けた。
 そうして、私の呼び掛けに応じて集まってくれた人たちを、海洋調査用の筏に乗せた。
 白、黒、赤、黄色、様々な人種や民族の人々…彼らは、何処にも属する事の出来ない人たちだった。
 いや、アシュロ人の女性と結婚したネオーギンなどは、引裂かれるくらいなら死んだ方がマシだとまで考えている。
 これから彼らは、私が父親から聞いた、まぼろしの「希望の大地」を目指して船出をするのだ。
「ラスキン…長い間お世話になりました」ネオーギンが言った。
「あぁ…先行きは険しいと思うが、ハンナをしっかり守ってやってくれ」
「ラスキン先生も、どうかご無事で…」大学で私の教え子だったハンナが言った。
「うん、君もな…無事、新天地にたどり着いたら、いい子を産むんだよ」
 ハンナは泣いていた。ネオーギンや他のみんなも泣いていた。
 彼らは、これから住み慣れたムー大陸を離れて、伝説だけを頼りに「希望の大地」に向かって旅立つのだ。
 どうか無事に「希望の大地」にたどり着いて欲しい…未来は君たちの手の中に必ずあるはずだ。
 私は祈るような思いで、岸壁の上から彼らの船出を見送った。
 報復のために、UEC連邦とカリメアの連合軍が放ったオリハルコンの火矢が、空をよぎってアシュロに飛んで行くのが見えた。
 すでに大地は唸りを上げながら激しく振動していた。まもなく世界は終るのだろう。

 外洋に乗り出して行った人たちを見送ると、私は水族園に取って返して、最後の仕事に取り掛かった。
 水族園に着いた私は、海に繋がっている大プールの水門を開け、すべての鯨たちを海に解放してやった。
 長年、鯨の研究をして来た私は、彼らがとても知能の高い生き物である事を知り、鯨に歌を教えておいた。
 きっと鯨たちは、私が教えた歌を…ムー大陸で起きた出来事を、子々孫々にまで歌い継いでゆく事だろう。
 もし、人類に未来があるのなら、いつしか私が教えた「鯨の歌」が未来の人々に伝わるに違いない。
 そして、未来の人たちは、鯨の歌から、ここムー大陸で我々が犯した、愚かな過ちを知る事になるだろう。
 どうか未来を生きるであろう人々は、我々と同じ過ちを繰り返さないで欲しい…と切に願う。
 私は迫り来るムー大陸の破滅を前に佇みながら、大プールの水門から出て行く鯨たちを見送った。
 鯨たちは、まるで別れを告げるかのように、高く潮を噴き上げながら、故郷の海に帰って行った。

もしも、あなたが鯨の歌を聞いたなら想いを馳せて下さい。人々の業によって滅んだ「ムー大陸の最期」に…

クロニクル ~カルマ~ 第一話「ムー大陸の最期」(完) 第二話へ続く



<女性のみなさまへ>
もしも「私は容姿に自身が無い」と思っていらっしゃる日本人女性の方がいたら、それは大変な間違いです。
実は日本女性の美的レベルは、世界的に見ても、高水準に位置します。それは、古代から続いた混血が齎したものです。
ユーラシア大陸の外れにある日本は、古代より、あらゆる方面から流れて来た民族の吹き溜まりでした。
南、北、大陸から、あらゆる民族がやって来て、原住日本人と混じり合った結果、今日の美しい日本女性が生まれました。
言い換えれば、日本人は典型的な雑種であり、だからこそ生命力が強く、長寿であり、美形が多いのであります。
民族が交わる所に美形あり…世界的に見ても、スペイン、南米、ウクライナ、古代のシルクロード流域は美人の産地です。
程度の差はあれ、現在世界に居る人間は全て雑種です。従って、ナチスの某独裁者や、民族紛争を煽っている某国の大統領が言う「純潔種」などはどこにも存在しないまぼろしです。
もうこんな馬鹿げた争いはやめようではないですか。あなたがたはみんな血を分けた親子であり、兄弟・姉妹なのです。
民族の諍いにまで及ぶ問題の奥には「誰かが有りもしない幻想を煽って、国民を駆り立てている」…が潜んでいます。
そう言って置いた方が、自分達に都合が良い政治家や、権力を握りたい狂人のたわ言だと思って、無視する賢さを持って下さい。

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なんか色々混じってるような気がしないでもないが、ムー大陸だから気のせいだった。
そう、争っていた人々はもういないのだ。
#210[2014/05/12 21:47]  月歩(つきほ)  URL  [Edit]

Re: 何だか「あとがき」は蛇足だった様な気が…(笑)

> なんか色々混じってるような気がしないでもないが、ムー大陸だから気のせいだった。
> そう、争っていた人々はもういないのだ。

同じテーマを、手を変え、品を変えして訴えるのはシンドイもんだね~
そういやぁ、おとぎ話も同じ様なテーマの教訓がとっても多いのね。
何度言われても解らない人間と言う動物は、愚鈍なのかなぁ…?><
と言うか「偉い人」と言われる連中が子供っぽ過ぎるのかもね~
<そして、誰もいなくなった>まるで「アガサ・クリスティ」だね(笑)
#211[2014/05/12 22:54]  sado jo  URL  [Edit]

偉くなると権力が目を濁らせるのかな?
偉くなったことないからわからないよ!

吹き溜まりの雑種であるがゆえに何でも取り込んで工夫する人種になってしまった日本人。
工夫の使いどころをたま(とても?)に間違えるけどね(´・ω・`)
#212[2014/05/12 23:36]  月歩(つきほ)  URL  [Edit]

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このコメントは管理人のみ閲覧できます
#213[2014/05/13 01:48]     

Re: 以前にも話したけど…

> 偉くなると権力が目を濁らせるのかな?

一度偉くなると、落ちるのが恐いのね。
それで、もっと!もっと!と欲深くなって「悪い業」に犯される。
だから、偉い人の中には、結構「偽善者」が居て、人を惑わすのね。
庶民の皆様は「有名人」にはご注意を…賢くなって騙されない様に(笑)
#214[2014/05/13 11:54]  sado jo  URL  [Edit]

Re: y様 人間不信はいけませんね~

気持ちは解りますが、世界で認識を共有出来るのは、人間しかいませんから…
芸能人などは、自分を作るのが得意…蝶みたいに綺麗に花に擬態するんです。
おっ!上手く化けてるなぁ~…って、一種の持っている才能ですよ(笑)
無いものねだりより、自分しかない才能を磨いた方がいいんじゃないかな?^^
#215[2014/05/13 11:57]  sado jo  URL  [Edit]

m様 見下ろせど奢らず…却って哀れむ

って、凄い境地ですよね~♪
自分を磔にした人々に「父(神)よ、この人々をお許し下さい」
一目でもお会いしたかったなぁ…「済みません。爪の垢を少し分けて下さい」
でも、その時代に生きてたら周りと同じ様に「イエスを殺せ!」何て言ったかも…
人間は皆「盲目の罪人」ですよ。自覚してる人は少しだけマシなのかもね(笑)
#216[2014/05/13 12:02]  sado jo  URL  [Edit]

日本人女性は、ある意味最終形態ですね。
自信を持っても良いでしょうか(//・_・//)
それはともかく(焦)
人間は、度の過ぎた争いで滅んでいく遺伝子が
絶えることなく続いているように感じました。
その時代はムー大陸だけで済みましたが
現在は地球丸ごと…の勢いですものね(-"-;A
#472[2014/07/15 22:55]  ヘタリーナ風鈴  URL 

Re: h様 COありがとうございます^^

> 人間は、度の過ぎた争いで滅んでいく遺伝子が
> 絶えることなく続いているように感じました。
> その時代はムー大陸だけで済みましたが
> 現在は地球丸ごと…の勢いですものね(-"-;A

敢て、滅亡を望んでるはずは無いのですが、
他に勝つ事によって、進化し繁栄する(人類もそれで覇者になった)
と言うDNAの方程式が、マイナスに働いた場合はそうなりますね~><
人類は特化と言う道を選びましたが、実はこれは滅んだT.レックスと同じ(笑)
#474[2014/07/16 00:34]  sado jo  URL 














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