シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

「▼クロニクル ~カルマ~」
クロニクル ~カルマ~ 小説本編

クロニクル ~カルマ~ 第2話 「星を継いだ者」(1)

地球

<オリジナル/SF/ファンタジー>

 さて、本格的に物語を始める前に、それを語っている我々が何者なのか?を話しておかなければならない。
 先代種族が残した記録によると、我々の祖先は、約1億4000万年年前に地球に姿を現したそうである。
 だがそれ以前に、我々と酷似した特長を備えた種もいたらしいので、はっきりした起源は定かでは無い。
 いずれにせよ、我々の方が先代種族よりも早く地球上に現れて、遅くまで生き残った事は確かな事実である。

 我々がなぜ、種の90%以上が滅びたあの大災悪を生き延びたのか?その理由は色々あると思う。
 まず、我々は誕生した時点から、平時でも、緊急事態の際でも、素早い移動を可能にする手段があった。
 そして、こちらの方がより重要だと思うが、我々の間には、先代種族のような雌雄の格差がまったく無かった。
 体力は勿論の事、全ての面において雌雄は平等であり、ただ、子孫を残すための機能が異なっているだけだった。
 雌雄同じに子育てが出来ると言う特質は、不測の事態が発生した場合でも、子供が生き残る確率がそれだけ高いと言う事だ。

 「新世紀大絶滅」と呼ばれる先代種族が世界を滅ぼした、あの大災悪の後、我々は幾つかの大きな進化を遂げた。
 身体の方から言うと、まず、頭部にあった脳が胸の位置に移った。これで言わば、文字通り頭脳=心になった訳なのだ。
 まぁ、正確には、我々の脳は胸の奥の脊髄の部分にあるので、心臓=脳では無いのだが…
 もう一つは、肩部にあった飛行骨を二つに分岐させて、先代種族が持っていた手のような触手を発達させた。
 これは物を掴んだり、物を作ったり、後述するコミュニケーション手段に使ったり…と、何かと便利に機能している。
 しかし、尤も大きな進化は、我々の特徴の一つであった遠くを見通す鋭い眼…それを千里眼にまで進化させた事だ。
 我々の祖先は、遥か高みから地上を見透し、風を予測し、これから起きる事を予知しながら飛んだそうである。
 今の我々は、さらにずっと先に起こる出来事を見透せる。つまり我々は、未来を見る眼を手に入れたのだ。
 あの「新世紀大絶滅」の最中、そしてそれを生き延びるために、祖先たちが苦労して手に入れた予知能力。
 これによって我々は、大絶滅に至るまでに先代種族が犯して来たような過ちを、まったく犯すことが無くなった。
 前もって、何をしたらどうなるかを予見して、物事の原因とその結果…つまり未来を予め察知出来るからだ。
 我々の名は<フリーゲン>。その言葉の意味する通り、自由に空を飛ぶ者である。

 我々の同胞は、大きさも、色も、特徴もそれぞれ異っている。
 森に住む者、草原に住む者、海辺に住む者、寒冷地を好んで住む者…様々な種類の者がいる。
 かっては小型の同胞を食料にしていた者もいたらしいが、今ではそんな者はまったくいない。
 我々はお互いを尊重しあって住み分けている。みんな仲が良く、先代種族のような同族争いは決してしない。
 今、語っている私は中型で…そうだなぁ~…昔地球に棲息していた鳩より少し大きいくらいだろうか。
 聞いた話では、先代種族の祖先は鼠のような小動物だったそうで、言ってみれば、大絶滅の後に先祖帰りしたのかも知れない。
 現在、地球上に棲息している陸上哺乳類は、地下に潜んで大最悪から難を逃れた鼠の類だけで、その他の種は見当たらない。
 その先代種族と同じ哺乳類の鼠が、我々の一部の同胞に狩られると言うのも、皮肉な業の因果なのだろうと思う。
 時は流れ、時代は容赦無く移り変わる。何者も他の者の上に永遠に君臨する事など出来はしないのだ。
 先代種族がこの事を自覚し、違った文明を築いていたなら、或いは滅亡せずに、今も栄えていたかも知れない。

 我々<フリーゲン>は相手が誰であろうと、お互いに相手の立場を尊重し、共存し合って生きている。
 特に、我々は木を大切にする。木は我々に住居を与え、食料まで与えてくれる大切な存在なのだ。
 木は、あの先代種族が引き起こした「新世紀大絶滅」の後の激しい放射能嵐から逃れて、森の奥深く隠れた我々を守ってくれた。
 だから、巣や公共物を作るために、枝をもいだり、木を切ったりする時は、あらかじめ了解を得てからにする。
 その代わりに、我々は木の実を食べて、体内に取り込んだ種子を地球上の至る所に運び、広範囲に渡る植林を行っている。
 言わば、木を増やす手伝いをしている訳で、お互いに、持ちつ、持たれつの共生関係を築いているのだ。
 現に、あの「新世紀大絶滅」の後、見渡す限り荒れ果てた有様だった大地は、今やすっかり森林で覆われている。
 木のお陰で一時は絶滅寸前だった我々は、その後、こうして8億近い個体数を数えるまでになった。
 これからも数は増え続けて行く事だろう。だが、我々が幾ら増えた所で、他の生物の迷惑になる事は無いだろうと思う。
 我々は、先代種族のように何かを巡って合い争う事も、ましてや自然環境に害を及ぼすような事も一切しない。
 第一そもそも、我々<フリーゲン>は、先代種族のように長い寿命を持ってはいない。
 先代種族は、なまじっか寿命が長かったために、余計な欲を出して互いに争い合ったそうだ。
 地上に線を引き「ここは俺の土地だ!俺の海だ!俺の空だ!」と主張し合って、抗争を繰り広げたそうである。
 だが、そんなものが存在すらしない事は、先代種族が定めた線引きなど関係無しに空を渡り歩いた、我々の祖先も良く知っていた。
 地球は、空も、海も、陸地も、すべてが繋がり合っていて、目に見える境界線などはどこにも無いのだ。
 きっと先代種族は、自身の歪んだ心を通して、有りもしない蜃気楼を見ていたのだろう。

~続く~

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~ Comment ~


脳が胸に・・・・って凄い!
ほんとにそうなるのではないかと
思いました。

心は感じますものね。

雌雄・・・はじめはすべて雌だと聞いたことがあります。
これからどうなるのかな?
初めからなので読みやすいです^^

でもこれだけの文章やっぱり凄いです。^^
#219[2014/05/15 01:50]  yume-mi  URL  [Edit]

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このコメントは管理人のみ閲覧できます
#220[2014/05/15 07:21]     

Re: y様 ありがとうございます^^

> 脳が胸に・・・・って凄い!
> ほんとにそうなるのではないかと
> 思いました。
> 心は感じますものね。
> 雌雄・・・はじめはすべて雌だと聞いたことがあります。

一部の恐竜は機敏に動く為に、腰にもう一つの脳を持っていたと言われてます。
脳がそのままハートだったら素敵でしょうね~♪邪魔な頭部をコンパクトに出来るし…
生物は全部雌から発生します。まぁ、雄は雌を補助する付属物みたいな存在で…(笑)
#221[2014/05/15 12:47]  sado jo  URL  [Edit]

Re: e様 COありがとうございます^^

「鳥は恐竜から進化した生物」と言うのは、今では学会の定説になってますね。
人間も鳥みたいに卵で産んだ方が、女性にとっては楽チンでしょうね~
後は電気保温機で暖めて「勝手に産まれて来い」なんて無責任な親が増えるかも(笑)
#222[2014/05/15 12:52]  sado jo  URL  [Edit]

う〜む…

この先代種族は、あれですね…

英語で言うところの「human being」…

そんな気がしてならないですw
#223[2014/05/15 21:35]  blackout  URL 

Re: blackout さんのおっしゃる通りです^^

> この先代種族は、あれですね…
> 英語で言うところの「human being」…
> そんな気がしてならないですw

確かに先代種族の多くはマトモなhuman beingsだった筈ですが、
マトモでないhuman beingが、人の上に立った為に世界は滅んだ様ですね。
これらの人達はHomo sapiens族と言うより、 Crazy monkeyと言った方が
似合いそうな欲深い人種だったそうです(笑) =フリーゲン=
#224[2014/05/15 22:28]  sado jo  URL  [Edit]

コズミックフロント(NHK宇宙チャンネル)で
地球型惑星が次々見つかっていると放送していました。
中には巨大な地球型惑星(メガアース)で地球の17倍の質量を持つとか…。
高度な文明と知能を持つ生物がいるのは地球だけではないと
本気で考えて良さそうな時代になったなと思いました。
地球年代記を拝読して、こういう歴史を重ねた惑星が無いとは言い切れない…
そんな気持ちになります。
#396[2014/07/01 20:16]  ヘタリーナ風鈴  URL 

Re: h様 COありがとうございます^^

人類が望遠鏡で、他の惑星を見れるなら、向こうはもっと優れたモノでこちらを見てる。
…と考えるのが当たり前でしょうね。0.1ミリ範囲の物体でも解析されていたりして…
女子はうかつにスッピンで居られないかも…ですね?(笑)
それに同じ肉体を持ってるとは思えませんね。
それぞれの惑星の環境によって、進化の過程も生命の形状も異なるはずですから…
UFOそのものが生命体と言う事もあるし、人が可視出来ない精神体もいるかも?(笑)
#397[2014/07/01 21:13]  sado jo  URL  [Edit]














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