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シムーン第二章 ~乙女達の祈り~

アニメ /コミック

年初めから縁起でもない『死役所』(笑)

23-01-09

『早い遅いの違いはあっても人は誰もが必ず死ぬ。ならば先に死を学んでから生きよ』と言うある哲学者の金言を未だに覚えている。
人は誰しも産まれた時から死に向かって歩き始める…ところが日本人は自然の当たり前の道理をなぜか忌み嫌う。どうやら『国産み神話』に描かれる死(黄泉)の穢れの呪詛が深く日本人のDNAにこびり付いていると見える。文字通り「死は死んでも嫌なもの」なのだ(笑)

『死役所』あずみきし作はそんな日本人が避けたがる【死】の問題に敢て正面から取り組んだ漫画であり、アニメは冒頭、TVドラマは前編部分が放映されたので纏めて紹介する…感想を一口で言うと衝撃的だった。久し振りに観た大人の鑑賞に耐える読み応えのある作品である。
登場人物それぞれの死から見えてくる生き様が心に突き刺さってくる…今時の流行である軽いノリの異世界モノや転生モノとはまるで違う。
それでいてコミカルな部分もあってシュールな所もある…漫画(月刊コミックバンチ)は530万部を売る大ヒットらしいが、アニメはPVの様な触りが製作されてから本格的なアニメ化が止まっているし、TVドラマは前編が放映されてから後編の製作がストップしてしまっている。
漫画はよく売れているのに、アニメやドラマはなぜ止まったままなのか?…どうも社会情勢と照らし合わせるに、昨今のカルト教団問題が影を落としている様に思える。と言うのも今日本で問題になっているカルト教団そっくりの宗教団体が作中の重要ファクターになっている。
TV局や新聞社にあれこれクレームを入れてくる教団らしいから、さすがにトラブルは避けたかったと言うのが製作サイドのホンネであろう。

あらすじ…この世とあの世の境目に、死んだ直後に誰もが必ず死後の手続きをする為に訪れる奇妙な役所がある。そこを『死役所』と言う。
自分が死んだ事が分らない人。理不尽な死に方に納得しない人。様々な未練を残して死んだ人。生前に幸せだった人。不幸だった人。虐待死した子供。そんな死者達の思いを受け止めて【病死課】【事故死課】【自殺課】【他殺課】などへ案内する一人の【総合案内係】がいた。
何があっても笑顔を絶やさずに「お客様は仏様ですから」と親切に死者に接する彼の名は『シ村』…そんな彼にはおぞましい過去があった。
生前も役所勤めをしていた彼には妻と幼い娘がいた。だが育児ノイローゼで悩んでいた妻が人に勧められてある宗教に入会すると言い出す。
妻が助かるならとシ村も一家で入会するが、常識離れした教義の実践や高額な寄付の要求に不信感を抱いて妻と子を連れて脱会しようとする。だが妻はすでにカルトに洗脳されていて脱会を拒否…せめて娘を助けようとして連れ出すが、教団から逃げた直後に娘は死んでしまう。
ちょっと目を離した隙に誰かに殺されたのだが、シ村が思わず抱き上げた時に衣服にベットリと血が付いたのと、娘の胃の中に絵具があった事から児童虐待を疑われて死刑になった(子供を虐待死させた場合、現実には懲役15年位の刑罰なのだが作品の設定上死刑にしてある)
笑顔の裏に凄惨な過去を隠しながら今日もシ村は死者の総合案内に勤しむ…だがそれは何も彼だけに限った事ではない。好好爺にしか見えない【他殺課】のイシ間、綺麗なお姉さんにしか見えない【自殺課】のニシ川 、漫画好きのオタクにしか見えない【事故死課】のハヤシ。
などその他の職員の全てが悲惨な過去を持っていた。なぜなら『死役所』で働いている者は全員が刑を執行された元死刑囚…つまり死してなお成仏を許されずに労役を科せられた犯罪者だからだ。そして物語が進むに従って職員一人一人の不幸な人生が明かされてゆくのだった。

男女共に結婚する事が必然ではなくなった現代…時に学校生活や仕事に就く事さえスルーして、不登校を決め込んだり引きこもったりする人達もいる社会において、一生に一度は必ず体験しなければならないイベントは【産まれてくる事】と【死んでゆく事】になってしまった。
華やかなプラス面だけが持て囃される世相の中で、鋭い視点から人間のマイナス面をえぐった『死役所』は近年稀に見る珠玉の作品である。
自然災害や偶発事故を除けば人の死はその生き様の現れである…人の命を粗末に扱った者は東條英機やウサマ・ビンラディンの様な粗末な死に方しか出来ない(そりゃぁ、自分より下の人間を特攻させたり、自爆テロをやらせたりしていれば、そんな末路にしかならない)(笑)
反対に例え世間から悪党だと言われようとも、人(子分)を生かす為に汚いシノギをやった田岡一雄やビトー・コルレオーネは天寿を全うした。
※平たく言えば家族の為に泥棒をしても死に裁きはないと言う事である…だからと言って敢えて泥棒する事を容認している訳ではない(笑)
死の天秤は命を基準にしてしか作られていない…そこでは人の法も、地位や財産も、打ち立てた功績や名声も何一つ適用されないのである。

まんが王国:『死役所』あずみきし作 (1巻~3巻まで試し読みのリンク)
(▲)コミック版は物語の途中までで良ければ、合法的に無料でご視聴いただけます。
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(▲)スペシャルアニメ『死役所 原作:あずみきし (ドラマでは8話目に出る 母親に虐待されて死んだリンが冒頭に登場する)

(▼)テレビドラマ 『死役所』第1話 原作:あずみきし 主演:松岡昌宏(TOKIO)
   ドラマ 『死役所』の前編 1話~10話は、この「Dailymotionサイト」で最後までご覧いただけます。

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~ Comment ~


死役所の職員さんは大変そうね。
私は死刑になるつもりは無いから、なりませんけどね。
う〜む、こどもの虐待死は嫌なものですね。
大人なら、それまでに選択肢があるはずだけど、幼い子どもには、選択肢が無いですもの。
#8649[2023/01/08 17:36]  しのぶもじずり  URL  [Edit]

Re: しのぶもじずり様COありがとうございます^^

> 死役所の職員さんは大変そうね…う~む、こどもの虐待死は嫌なものですね。
> 大人なら、それまでに選択肢があるはずだけど、幼い子どもには、選択肢が無いですもの。

死役所勤務は(人がいつ死ぬか分からないから)24時間無休(死んでいるので疲れないから)睡眠無し、給与無し…この世だったら完璧なブラック労働!労働基準法違反ですね(笑)
ま、職員は人の命を粗末にした死刑囚ばかりですから懲罰の意味合いもあるのかも知れません。
事件が起きる度に子供の虐待死には胸が痛みます…自分を頼りにして命を預けてくれている子供を親が裏切るんですからね。これほど惨い犯罪はないと思いますよ。
虐待が頻繁するのは、子供を殺しても懲役15年位で済むからで刑が軽いせいだと思います…老人ならそれ位でもいいが、子供の未来を奪ったんだから死刑に処さなきゃダメでしょう。
#8650[2023/01/08 20:53]  sado jo  URL 

宗教観と死生観。

 閻魔大王の裁きの、人権が大声で言われる現代版のようです。人が死んだら「お客様は仏様」になる宗教観は案外いいものですね。
 しかしこのアニメは怖ろしいです。youtubeを見て、コミック版を見たら、母親に虐待されてもなお母親を慕う小さな子供、まあ、かわいくて、かわいそうで、涙が出てきました。
 
 街なかや公園では、子供連れの父親や母親をよく見かけます。私の子供の頃は、父親と一緒に遊んでいる子供なんてほとんど見たことがないですが、いまの世の中はかなり"子供の天国"になっていると感じます。
 しかし一方で、貧しい者はますます貧しくなっている世の中ですから、飢えている子供がかなりいるそうです。そんなかわいそうな子供は想像以上に多いのでしょう。親もいろいろ。眼の中に入れても痛くない親もいれば、子供を自分の所有物のように扱う親もいるのですね

 しかしこのコミックの母親は生活が荒れていて、心が相当すさんでいるようです。特に若くして子供を産んで、すぐ離婚すると、子供を育てることより、その日の生活と自分の行く末を考えて、心が折れて、うつ状態になるのでしょう。子供は悲惨ですが、母親も自ら招いた結果だとは言え、哀れなものです。貧困は、先進国といわれる日本でも悪の筆頭ですね(北朝鮮では自由がないのが最大の悪ですが)。
 
 しかしもう一つ思ったのは、死生観の違いでも人生はかなり変わることです。悪い奴ほどよく眠ると思っている人もいれば、悪い奴は地獄に落ちると思っている人もいれば、生まれ変わりがあるので究極的には大丈夫と思っている人もいれば、そんなことは関係なく人はみなただ寿命や事故や災害で死んで無になるだけだと思っている人もいます。
 ところで、この役所には「復活課」はないのですかね。(笑)
#8651[2023/01/09 08:52]  ☆バーソ☆  URL  [Edit]

Re: バーソ様COありがとうございます^^

> 人が死んだら「お客様は仏様」になる宗教観は案外いいものですね。
> かわいそうな子供は想像以上に多いのでしょう。親もいろいろ。眼の中に入れても痛くない親もいれば、子供を自分の所有物のように扱う親もいるのですね
> ところで、この役所には「復活課」はないのですかね。(笑)

人は誰もが死ねば「仏様」です…但し、仏様の死後の行き先を選別するのが『死役所』の様です。
死刑囚以外は全ての人に成仏する権利…人権ならぬ仏権がありますが、成仏の扉の先で死者を待つのが天国なのか?地獄なのか?の運命は死役所の職員すら知りません。
まぁ、その辺が謎めいているのは「人の生き方」を問う…のが死役所のテーマだからでしょう。
罪を犯しても自覚がなく、悪い奴ほどよく眠る…のもいますが、人が自分をどんな目で見ているかは分るはずです。反省せずに開き直った所で本人は周囲の邪魔者です。
最近、この世に生れ落ちるのを何が出るか分らないガチャポンに例えて「親ガチャ」と言うそうですが、子供も親を選べない代わりに、親も産まれてくる子供を選べません。
子供を虐待して殺す親もいれば、反対に犯罪を犯して親の人生を滅茶苦茶にする子もいます…虐待されて死んだ子。犯罪被害者の親。犯罪加害者の親。先の不幸を防げないのが人のサガ。
作品を見ると全体的には、自らの人生を振り返って未来を目指す「復活」の物語だと思いますよ。
#8652[2023/01/09 14:29]  sado jo  URL 

こんばんは

「死役所」、面白かったですよ。
死んだらどうなるかがよく分かりました。(笑)
身をきれいにして死なないと天国に行けなかったり、
生まれ変われなかったり、冥界で永遠にさ迷ったり、死役所勤務に
なったり大変です。このドラマのユーモア感覚も好きですね。
「お客様は仏様です」とか、映画の最後に「この物語はフィクションです」とかね。
某宗教団体を意識もしているんでしょうね。
「いじめ」に関して、最近ある解決法が提唱されています。
http://okuchika.net/?eid=9380
#8653[2023/01/10 19:43]  エリアンダー  URL 

Re: エリアンダー様COありがとうございます^^

> 「死役所」、面白かったですよ。死んだらどうなるかがよく分かりました。(笑)
> 某宗教団体を意識もしているんでしょうね「いじめ」に関してある解決法が提唱されています。

深刻なテーマだけに気を遣ってか?「お客様は仏様」なんてユーモアを混ぜてますから笑ったりします…エリアンダーさんに喜んでいただけたら紹介した甲斐があって良かった^^
連載が始まった時期を考えると、オウム真理教や統一教会の影響を受けているのは確かですね。
作者は「死をネタにして人々をだます」新興宗教が赦せないのもあって書いたんじゃないかな。
リンクを読みました…確かにイジメを含む少年犯罪で本人は刑事罰を受けません。けれど民事で多額の損害賠償を請求される親は、ほとんど一家離散したり、自己破産しています。
兄弟も進学や就職で差別されるなどの被害を受けます…例え未成年でも犯罪を犯せば家族全員を不幸に突き落とすと言う事です。犯罪は損だと言う事を先に教えた方がいいかもです(笑)
#8654[2023/01/10 23:59]  sado jo  URL 














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